2017年06月03日(土) 14:48
さぁ皆集まって~、MADMAX Fury of ArmoredCore -V-alhallaがはっじま~るよ~。
本内容は後日修正する可能性もございますので予めご了承ください。
最後に近況報告と今後の投稿について報告があります。
少しばかりの内容ですが、濃密なMADを楽しんでいって頂ければ幸いです。
では…どうぞ!!
『4.94 Fool』
アクセルペダルそのまま、グッと踏み込みスピードアップ。ギアチェンジ、踏み込んだ足に重みが加わりペダルそのものの質量が増えたように感じた。速度が一段階上がることで操縦席を大きく揺らす。上々なエンジンである証拠だ。
ウォー・タンクこと『足』は快適に砂の上を走行する。申し分ないほどに満足、やっとの思いで手に入れた足に一息つく男。いい意味でも悪い意味でも助けになった口枷は未だに外せない。後ろに手を回し、金具部分を外せるか試みるも結果は変わらず。ガチャガチャと乾いた金属同士を共鳴させる。
しかしだ、これがあればどこへだって逃げられる。逃げ続ける足があれば、後はどうにかなる。しいて言えばこの口枷がどうにも鬱陶しい。今すぐにでも外したいのは山々だがそう易々と取れる代物ではないらしい。それに生憎、外すモノがないときた。後のことは…どうにだってなる。
縦長のサイドミラーに目を移すと遠ざかり行く女たちと白塗り、荒れた鏡面の点になっていく。その光景にふうっと息を吐き、この上ない喜びを体感してハンドルを握る。
つかの間、重厚なエンジン音に混じる空回りしたような異音。その異音はさらに増していく一方、このような図体をした足ならば通常ありえない。音の発生源を探ろうとするもギアスティックやアクセル・ブレーキペダルに異常なし。ハンドルや燃料も同様、原因は分からず。
それだけではない。なにか…。
減速…?…減速している!!?
地面が傾斜しているわけではなく、エンストを起こしたからでもない。確実に着々と減速している。たったの数m進んだだけでバテたか?図体だけが取り柄か、このタンカーは。
ダッシュボード上の計器類を見るも異常はなし。それどころか燃料タンクはFullを表示している。「何も異常はありません」とでも誇らしげに言っているかのようにさえ感じる。
なんでだ??!、なんでなんだ!!
男が動揺している間に20…10…5…と速度は低下、ついには停止してしまう。今しばらく休憩をしたいと再び砂の上で立ち往生。
動け動け動けッ動けってんだクソがッ!!
運転席の至るところを殴る蹴るといった横暴をしても足は動かず。まさかと思いサイドミラーを見やると、点になりかけていた女たちがウォー・タンクへ疾走している。仕掛けたのは片腕の女か、よくよくサイドミラーを見れば義腕が引っかかっているではないか。
男はため息をつく。
ン野郎…。
フュリオサが片手にボルトカッターを握り全力疾走。行き着く間もなく男に交渉を持ちかける。
「キルスイッチよ、私がセットしたの」
車窓から顔を出せば、早速男の足を取り戻そうと追いかけてきたフュリオサ。ナイフを一端投げ捨て息を整えた後にかけてあった義腕を引き抜く。順を追って引き連れてきた五人の女たちも道具を持ってきたらしく、後ろを見ると不発のソードオフにボルトカッター、それにレースと実に多種多様。
短い上腕に金属部を通し、革製のハーネスを腰に巻き固定する。
「動かせるのは私だけ」
交渉――。
着いて早々交渉である、『私がいれば動かせる』と。となればコイツが仕掛けたということか。ならば乗せるべきであろう。先の戦闘では多勢だったが片腕のない女一人であれば構わない。
「…お前は乗れ」
思考を巡らせ端的に吐き捨て前へ向く。
「全員一緒よ」
男はフュリオサを再び見やる。お前だけと言ったにも関わらず一方的な要求は容易く論破された。このオンナ共と仲良く逃げろだ?それだったらこっちにだって考えがある。
「…なら待つ」
少しばかり思案した末、男が導き出した答えはフュリオサを含む女たち全員を硬直させた。また振り出しに、いやもう外へ出ることも…希望そのものを奪われてしまうことだ。
不快なドラムが聞こえる…。あの振動が小さく諸々の臓器を揺らしていく。耳障りなギターが聞こえる…。あの音響が小さく左右の鼓膜を刺激していく。だがそれは幻覚であり幻聴だ。だとしても彼女らにとってそれらはトラウマを想起させるに十分であり、畏怖の対象として足りうる存在だ。
あの砦で何をされたか。腐った悪党が私たちに何をしてきた。文明の再生?絶対的な神格?いい加減その吐き気を催すような妄言なんか……支配なんか…!!
だが狂喜の宴は私たちの軌跡を辿って確実に向かっている。来た道を…ウォー・タンクの重厚が残したタイヤ痕を辿れば遠方の砂漠にゆらゆらとした幻影。ヤツラだ、ヤツラが行進している。幻覚や幻聴なんかじゃない。
五人の女たちが恐怖する。幻覚幻聴がリアルと化し、かつて皆が砦で味わったであろうトラウマの想起してしまい、怯え、恐れ、後悔、強気、不安が顔に出る。同時に汗も滲む。また戻される、また死の種を植え付けられる…死ぬのだと。
そんなこと…させない。希望を奪わせたりはしない。彼女らが希望である続ける限り、緑の土地があると信じる限り…私は、諦めない。己の希望を捨てない!
フュリオサは車窓へよじ登り、自己正当化する男に遠回しで忠告する。
「あの腐った悪党が喜ぶと思う?アンタはヤツの大事な女を撃って傷つけた」
だからなんだってンだ。足を手に入れるためにやっただけ、殺しちゃァいないだろう。『撃って傷つけた』というだけでこいつら全員乗らせてたまるか。
目線を合わせようともしない男にフュリオサはさらに追い打ちを仕掛ける。だが次は『美味い話』として持ちかける。
「ニトロ・ブーストで二千馬力、大型ジェネレ-タも装着できた最強のタンカーよ。今出れば五分は稼げる…!」
二千馬力……。確かに……その馬力であれば確かに、逃げる分には十分だ。だが…いや、しかし……。
男はあくまで白をきり続ける。だが健康的な男の眼は砂漠、フュリオサ、砂漠、女たち、砂漠…と明らかに動揺の様を隠しきれないでいる。美味い話に魅了するかと思ったがそう易々と席を譲ってくれるような性格ではないらしい。フュリオサにも焦りが出始め汗が滲む。
あと少し、あともう少しだ。だがどうする…次に何を持ちかける?どうすればハンドルを握らせてくれる!?………どうすれば!!!
「……一生ソレつけてるつもり!??」
痛いところを突いてやった。どうだッ…。
男はジロリとフュリオサをにらむ。痛いところを突かれたといった表情で。
男は観念し運転席を開け助手席へ移動する。案ずるなよと言わんばかりにグロックの銃口を向け運転席へと誘う。フュリオサは目線を合わせたままゆっくりと席に着き窓から身を乗り出す。「乗って!」とフュリオサに促された女たちは妊婦に続いて後部座席へ列を為して搭乗する。焦りと緊張で息が上がるフュリオサはグローブボックスからヤスリを取り出し、これでソレを外せと見せつける。男はヤスリに反応し、玩具を取り返す子供のように手にしては後頭部を押さえ付けている薄い金属板へ目掛け擦り始める。
全員乗ったことを確認したフュリオサはハンドルの下、計器類で埋め尽くされたグローブボックスへ手を回そうとすると。
「アァ!!」途端、男が一声に喚く。
何事かと思ったフュリオサが手を止め男を見やる。突きつける銃口の先は小型収納スペース。そこに黒光りするもう一丁の銃があった。ヤスリを後頭部に挟んだ男は腕を伸ばし、銃を奪う。まじまじと見つめ、コルト系列の大型リボルバーであることを確認した後自身のズボンにしまう。無論、グロックはフュリオサをとらえたまま。
フュリオサは再び手を動かす。カチッカチッと子気味の良いスイッチ音が七回ほど。すると、あれほど動じなかったこの巨体がイグニッションし始めた。エンジンが目覚め、排煙をまき散らし、逃亡劇の再開に応えようと呻りをあげる。
コイツ、輸血袋のクセに用心深い。
コイツ、片腕がないクセに油断できない。
だが…。
これで…。
逃げられる…!
お互い警戒心の塊となりながらも、考えていることはほぼ同じだ。腹をくくらなければこの先へは進めないということはお互い理解している。だが、お互いが兄弟家族協の如く手となり足となり協力するかと訊かれれば否である。
『協力するのならば言葉ではなく、行動で示せ』
男もフュリオサも…それだけが唯一共感できる要素だ。
「う…あ、ああ……」
二度目の気絶からやっと解放されたニュークス。腹部の鈍い痛みに上体を起こすとそう遠くない距離にウォー・タンク、砂塵と排煙が小さく揺れ動いている。初速段階故か速度が遅い、自慢の巨体が動じず停止しているように見えるほどだ。後方を確認するとジョーの大軍団が接近しており、何台もの武装車両とドーフ・ワゴンが蜃気楼で蠢いている。ビリビリとした狂気の再演がニュークスの身体を少しずつ覚醒させていく最中、ウォー・タンクのエンジン音が呼応する。寝起きのあくびにも似た図々しいエンジン音がニュークスを呼んでいるように長く呼応する。
すっくと立ち上がり切断した鎖の端を片手に走り出す。白い足裏と両足の五指に砂が入り込み不快な感覚。それでも不安定な不毛の地を蹴り上げる。蹴り上げ、蹴り上げ、蹴り上げ続けひた走る。
あのウォー・タンクの中にはジョーのオンナがいる。死んでたまるか。取り戻すまでは死んでも死に切れない。ACもスリットもいないんだったら…自分一人だけでも取り戻すッ!
主君のために地を蹴り上げ…。
生きて、死んで、よみがえる…。それがウォーボーイズの本望であり、使命であり…また戦い続けられる唯一の方法なのだから。
あるべきことを全うすべく地を蹴り上げ…。
まだまだ戦いたい、戦い続けたい。そのためならこの僅かな命投げ出せる。アーマード・コアで戦場を蹂躙できる命を…輪廻転生、再び授けてくれるのなら。
心底から懇願し地を蹴り上げる。
強硬な信仰心、譲れない使命感、依存的凶戦闘心。
それがニュークスの原動力だ。
以上となります。
長いこと待たせてしまい申し訳ございません。
今後の投稿についてですがリアルの関係上、5月もしくは6月に投稿するのは極めて難しいと思われます。7月あたりにかけて次話『4.94 Fool』を投稿すると想像していただければ良いと思います。
「また待たせるのかこの野郎」と感じていらっしゃる読者のために、今回は活動報告書における5000文字限界に近づけ、現状を報告させていただきました。
こんな私が言うのもアレですが…
「エタってたまるかクソ野郎が!!(本音)」
また何か報告がありましたら活動報告にて連絡いたします。
それでは今日も最高の1日を♪
※6/3更新
ほんの少しばかり誤字修正を行いました。
それとなんですが…第3回先行公開のPVが128なのよね。普通に読んでいる方々には分からないと思うのですが、活動報告一覧見てみると『128』と書いてあって非常に驚きました。知らない間にこれほど読んでくれている方々がいたことに感動いたしました。
この場を借りてお礼申し上げます。
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