作者:四ヶ谷波浪
シンシアが、オレを呼んでいる。
ソロは虚ろにそう言った。
彼がかたく握りしめている羽帽子のあるじはとうに亡くなっているというのに、彼はことあるごとに幼馴染の存在を主張した。
地獄の帝王を打倒し、邪法を使った魔を滅ぼし、とうとう世界の平和を成し遂げた天空の勇者、ソロ。
熾烈なる戦いのあと、仲間を帰るべき場所へ送り届け、彼自身も故郷の村だった場所に帰ったが、勇者を亡き者にするために滅ぼされ、蹂躙されたその村にはなんの奇跡も起きなかった。
優しかった育ての両親も、厳しかった師も、命を守るすべを叩き込んでくれた先生も、穏やかで純朴な村人も、そして、大事なかけがえのない幼馴染も、自分を守るために、死んだ。
時間稼ぎのためだけに。身代わりになるためだけに。「勇者」という希望のために、「勇者」を生かすために、愛しい村人たちは全員命を差し出したのだ。
どんな理由で亡くなろうと、死んだ者は二度とかえってこない。それを痛感した彼はとうとう精神を病み、自ら編み上げた幻覚の世界で幼馴染に会い……
被殺願望杯参加作品です。
pixivにも投稿してあります。
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