捕食者とこの島の王
「ウォォゥ……」
足に力を入れては、身体を支えきれなくて地面に崩れ落ちる一匹のアプトノス。
「私の力になろうとしてくれてるんだよね……?」
私は彼女の頭を撫でながら、そう言う。
さっきイビルジョーに攻撃された農場のアプトノス、ジェニーとはずっと友達だったから。
あなたは私の心配をしてくれるんだよね。でもね、大丈夫。
「あなたは後でムツキが手当てしてくれるから、そこで待っててね。私は大丈夫……他のアプトノスに協力して貰うから」
アランはイビルジョーをバリケードの外に出す作戦を頼んでから、ジャギィ達と戦っているイビルジョーの下に行ってしまった。
数ではジャギィ達が多いし、アランも居てきっとイビルジョーは倒せると思う。
でも、イビルジョーが村の方まで逃げたり暴れたりしたら村が無くなってしまう。
だから、私はバリケードの門に走った。
手動式の門は、ロープを引っ張って開ける物。
辺りには運が良いのか悪いのか、アプトノスの姿が無い。
「一匹……ここに連れて来ないといけないんだよね」
ここ一週間、野生のアプトノスをこのバリケードの中に入れた時は臆病なアプトノスを追いやる感じで門を潜らせたんだよね。
その時は村の人に門を開けて貰ったから私は剣を持ってアプトノスを追い掛けるだけだった。
ただ、今回は違う。
アプトノスをここに連れてきて、門を私が開けて、アプトノスをそこに留めておかないといけない。
アプトノスに、私の言葉は通じない。
捕食者を見たらアプトノスは何処かに逃げてしまうと思う。
辺りにアプトノスが居ないのも、ここから目に見える所にイビルジョーが居るからだろうし……。
「どうしたら……」
やらせて欲しい。そんな事を私は言ったのに、全く良い案なんてなかった。
アランは出来るなんて言っていたけど、私はアプトノスの生態なんてそんなに知らないし、それを生かせる頭脳もない。
「どうしたら良いか……分からないよ」
もしも、気の知れたジェニーだったらいう事を聞いてくれたかも知れないけど。
人と竜は相容れない。
アプトノスだって、モンスター。
私達は分かり合えない。
「───そんな事、ない」
ロアルドロスは私達を無害だと認めてくれた。
ジャギィ達は私達にボスを委ねてくれた。
リオレウスは私達の行動を学んでくれた。
ダイミョウサザミさんと私は───友達になれた。
私は、気が付いたら走っていた。
理屈は分からない。どうしたらどうなるとか、私は分からない。
私は気持ちを伝える事しか出来ない。
だから、それをする。
「アプトノスさん!」
少し走って、木々の陰で座っているアプトノスを見付けて話し掛ける。
この言葉が通じてるかなんて分からない。
それでも、この気持ちを伝えないといけないと思って息を吐いた。
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