狩人と捕食者の■■■
助けようって、そう思った。
身体は勝手に動く。アランが言うように、私は甘ちゃんだから。
助けてくれたドスジャギィさんを、私は助けたい。
「グルォ……ククク、グルォォァァ……ッ!!」
首を振り上げるイビルジョー。
あの動き、どこかで見た事がある気がする。
背後から聞こえるのは、ムツキの声。
悲鳴染みたその声を聞いて、やっと私は自分の状態を理解したの。
───誘われた?
さっきの黒い何かをまた吐くつもりだ。
また、さっきと同じ状態。───避けられない。助けもない。
思わず目を伏せた。
やって来るだろう、未知の衝撃に構えたんだと思う。
そのせいで閉ざされた視界の代わりに脳裏に映るのは、あの黒い煙に当たって四散するジャギィの姿。
い、嫌だ……助け───
「ヴォァァアアアッ!!」
突然聞こえた鳴き声は、イビルジョーの物でも───ましてやドスジャギィの物でもなかった。
次の瞬間、開いた眼に映ったのは劫火。
イビルジョーの頭に降り注ぐ火球。
「グラァァッ?!」
「ヴォァァァゥッ!!」
大気を扇ぐ大きな一対の翼。
自らを主張する赤と黒の甲殻は、その威厳を辺りに見せびらかせるように自身の領域を滑空した。
鋭い牙、翼爪。脚には毒を有する爪を持って、何かに食い千切られた形の尻尾。
飛竜。
世界の頂点に立つ生物達。
空の───いや、この島の王の姿がそこにはあった。
「ヴォァァァゥッ!!」
「グラァァァァアアアア!!!」
「……リオレウス」
空から舞い降りて、地上に君臨する姿はまるで───
◆ ◆ ◆
突如地に降り立つ火竜、リオレウス。
自らの縄張りを侵された事への怒りか、リオレイアを喰われた事への復讐か。そんな所だろう。
今この島で、一番頼もしい存在がイビルジョーに怒りの矛先を向けていた。
「……リオレウス」
「ミズキ!」
「痛ぁ?!」
飛び出て行ったミズキに寄って、頭を剣の柄で殴っておく。
「死にたいのか……」
「……っ。ご、ごめんなさい」
分かってるのかこいつは……。
「グラァァァァアアアア!!!」
突然の火竜の乱入に、イビルジョーの興味はリオレウスに移ったらしい。
自らと同等の体格を持つ火竜を睨み付け、口からは腐食性の涎を垂らす。
強大な力を持つ飛竜でさえ、奴には捕食の対象でしかないらしい。
「グラァァァァッ!!」
「ヴォァァァゥ!」
見境なくリオレウスに食らいつこうと大顎を振り下ろすイビルジョー。
だがリオレウスは翼を羽ばたかせ、後方にそれを交わす。
同時に放たれた火球がイビルジョーの背中を焼いた。
「グラァァァァアアアア!!!」
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