進む物語とこれからの君へ
少し冷たく当たり過ぎただろうか?
朝起きていつもの様にミズキを起こしてやろうと思い、俺はそんな事を考えた。
いや、そもそも今日は起こさなくても良いか。
着いてくるなんて言われた時は思わず強く返してしまった。
その時は「着いてくるな」の一言で無理矢理会話を終わらせて、ミズキに嫌な思いをさせてしまったかもしれない。
「……相変わらず、人付き合いはダメだな」
この目覚めの悪さはいつもの事だ。
こればかりは性格で、どうしようもない。
思えば村の皆やカルラやヨゾラにも、あまり良い接し方は出来なかったな。
嫌いじゃないんだ。
むしろ、楽しかった。一緒に居たいと思った。
「……っ」
そんな事を思ってしまって、俺は拳を強く握る。
ダメだ。
「一緒には居られない」
俺は誰かと居るべきではない。
いや、居たくないんだ。
これは弱い俺のわがままなんだ。
もう、誰も失いたくない。
だから、俺は一人で良い。
◆ ◆ ◆
「うんむ、忘れ物は無いかの?」
「はい、大丈夫です。その……ありがとうございました」
この村長に出会わなければ、俺は奴の———怒隻慧の手掛かりをいつまでも掴めなかったかもしれない。
だから、俺は誠意を込めて村長に頭を下げた。
「カッハハハハ! おかしいの、礼を言うのはこちらだと言うのに」
いつものように大きく笑い、彼はこう続ける。
「ワシからこそ、礼を言う。村を救ってくれた英雄よ……心よりの感謝を。また、気が向いたら遊びに来ると良い。ワシらは大歓迎だ。ここを……モガを、第二の故郷と思ってくれて構わんでのぅ!」
笑顔で言う村長は俺の肩を何度か叩く。
普通に痛い。
「……ありがとうございます」
第二、か。本当は第三になるんだがな。
「おめぇがアランか!」
そうやって村長と話していると、村に停まっていた船から一人の男が話しかけてくる。
モンスターの一匹や二匹が乗りそうな大きな船で、彼の姿はとても高い位置にあった。
彼が、村長の言っていた人物か。
しかし大きな船だな。階段を使ってやっと降りて来る彼を見ながら俺はそう思う。
「……はい、俺がアランです。早速ですが怒隻慧の事で───」
「焦るな焦るな! 船旅は長いんだ、いくらでも話してやる。今は別れを惜しむ時間だろう?」
暗い色の髪に蒼い瞳が印象的なその男性は村長と同じように肩を叩きながらそう口を開いた。
鍛え上げられ、ガタイの良い身体。
しかし目の前で愛想良く笑う彼の第一印象は、愉快な人物という所か。
歳は三十代後半から四十代前半という所だろう。
しかし老いを見せ付けない身体つきは頼もしさすら感じられる。
「そ、そうですね……。すみません」
「謝るような問題じゃぁねーよ! ま、俺は船で待ってるから挨拶を済ませてから登って来い」
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