熊さんとハチミツのお粥
「もう……丸一日寝てるニャ。みゃぅ……心配ニャ心配ニャ」
「そう言うお前も殆ど寝てないだろ」
目の前のネコが泣き顔で俺にしがみ付いてくるので、適当にあしらって寝ているミズキの上に投げる。
「ニャ?! せっかくスヤスヤ寝てるミズキを起こしちゃったらどうする気ニャ!!」
どっちだ。
「痛くなかったかニャ?! 早く起きるニャ……みゃぅ」
どっちだ。
しかし、本当にグッスリと寝ている。
静かに目を瞑る金髪の幼い少女。こんな奴が丸一日起きてリオレウスをあそこまで痛め付けたというのだから、信じられない。
だから、これだけ眠っているのも仕方がないのかもしれない。ただ、これ以上は確かに心配になるのも分かる。
「エビフライ揚げたら匂いで起きないかニャー」
お前はこいつをなんだと思ってるんだ。
「お父さんに言って揚げてみるニャ!」
なんだと思ってるんだ。
「ミズキ……」
ムツキが厨房に向かうのを確認してから、彼女の頭を撫でる。
こんなに小さな身体で、あれだけ無理をしたんだ。仕方ないか……。
たが、本当にアレをやったのはお前か……?
「ん……ぅう…………?」
そう思っていると、突然苦しそうな声を出すミズキ。
表情を伺って見れば微量ながらも眼を開けていて、少しだけ安心させられた。
「…………エビフライの匂いがする」
そして、そんな言葉を落とした。
「……そんなバカな」
人の心配を返せ。
「やっぱり起きたニャー!」
「良く眠る子は育ちますニャ」
お前ら本当に心配してたのか。
「……はぁ、全く」
「…………えとー、どしたの? アラン」
「心配させやがって」
「痛ぁ?!」
まぁ、今は難しく考える必要はないか。
「……頭が痛い」
昨日の昼過ぎから今日の昼までほぼ一日寝ていたのだから、当たり前といえば当たり前だ。
ただ、昨日はずっと雨に打たれていた訳だし念の為に熱を測ろうと額に手をやる。
「セクハラニャ」
なんでだ。
「……ほぇ?」
明らかに常温ではない体温。いつも以上にぼけーっとしてる物だから、まさかとは思っていたが。
……風邪引いてるな。風邪だけで済んでるんだが。
「……風邪だな」
「バカって風邪引くニャ? 引かないんじゃなかったかニャ?」
「…………ムツキが酷いよぉ」
さっきまでミズキを心配していたあのネコは何処へ行ったのか。
「バカは風邪を引かないのではなく、バカは風邪引いても気付かないのですニャ」
「あ、なるほどニャ」
「…………二人……共?」
ミズキは泣いて良いと思う。
「しかし困りましたニャー。せっかくエビフライを揚げたのに、病人に食べさせる物ではないですニャ」
「あ、私エビフライ食べたら元気になれそ───」
ミズキはそう言いながらエビフライに手を伸ばす。それを防いだのはムツキと───俺の手。
ムツキと俺で揚げられたエビを平らげ、彼女の分はなくなった。
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