11. 準備
ミッションがまだ来ないな、と思う位に何も無い日が続いたある時、呼び出された。
ファルファレロに変異したのを除く同期全員、そして中堅の内の技量が高い方が檻から出て、連れて行かれる。
今度はどういう理由だろう……と思っていると、連れて来られた先では妙な物が置いてあった。
自分達の体格に合った、人間が着る服のようなもの。
説明を受けた。
近々、この前の護衛ミッションの近くに隠れて存在している敵対組織に攻撃を仕掛ける。
その時に、これを着て臨んでもらう。
……記憶が鮮明に蘇って来た。
これまでの中で最も仲間が犠牲になった、敵対組織への殲滅ミッション。銃撃で、トラップで、爆弾で、沢山仲間が死んだ。
そして、タイラントなる、T-ウイルスの完成品とか言うB.O.Wを隠し持っていて、片目が、片目を失った時だ。
体力も尽きかけた自分達の中で片目が矢面に立ち、そして自分が命令を出しながら掻きまわし、どうにかして時間を稼ぎ、そして人間達が持って来たロケットランチャーなる武器で爆殺された。
良く、覚えている。
人間が服の説明の為に、ショットガンを持ってきて、その服に至近距離からぶっ放した。服は全く破壊されなかった。
狙撃銃でも同じだった。
今日から着て慣れろ、との事だった。
何故、今までそんな便利なものを使わせて貰えなかったのか、疑問に思っていると、自分にそのプロテクターなる服を着させている、警護ミッションの時も一緒だった人間が勝手に話した。
「ついさっき届いた特注なんだよ。
ただのハンターαが長い間生き延びて、他のハンターとは比べものにならない程に役に立つ存在になる事自体、そう余り無いらしいからね」
そうなのか。
自分達の価値は、いつの間にか新入りとは比べものにならない程になっているらしい。
だから、簡単に死なれては困ると。
腹を重点的に守り、そして脇や腕、足も守る頑丈な服を着させられ、パチン、パチンと言う音と共に固定されていく。最後に頭にすっぽりと被せられた。
視界も少し狭くなったし、呼吸も何か違和感がある。
「ガス対策もされているから。息苦しいのにも慣れろよ」
パチン、と音がすると、人間が離れた。
「じっとしてろよ」
……何だ?
「撃つからな」
え?
パン、と乾いた音。頭に当たった。腕に当たった。腹に当たった。足に当たった。
全部、当たった事が分かっただけで、全く痛く無かった。
脳天に撃たれても、同じだった。
「ショットガンでも、適切に防具のある場所で受け止めれば弾丸を受けずに済む。だが、衝撃までは消えない。
強い衝撃を受けたら、骨折程度ならするかもしれないから、覚悟しておけ」
それからも、弱い部分と守らなければいけない部分を教えられた。
銃から身を守る際には、首と目を守れ。特に目の部分は弱い。また、関節部分を晒すな。爪を出すな。
そして、自分の同期には、直前に爆弾を配られる事も言われた。それは特に、自分達だけの特注らしかった。
それとまた、渡される爆弾は、単純な爆発する爆弾だけでなく他の種類も出るらしい。
そう言えば、何故ファルファレルロは呼ばれなかったのか。
考えてみれば、簡単な事だった。
防具を着たら、擬態能力に意味が無くなる。
カシャカシャと音を立てながら戻って来ると、変な目で見られた。
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