16. 殲滅ミッション 4
ショットガンを杖代わりにして、色欲狂いが立っていた。
至近距離から二度もショットガンを食らっていた色欲狂い。腹のプロテクターを叩けば痛そうによろけた。
肋骨が折れたか。
「う……」
色欲狂いがそのショットガンで頭を殴った人間は、まだ辛うじて生きていた。
それを態々、もたつきながらショットガンを撃って止めを刺すと、反動でまた辛そうによろけた。
走れそうにも余り無かった。
ただ、足跡はここで終わっている訳じゃなかった。
先にまだ、続いていた。
……多少心細いが、先に行くしか無いか。
色欲狂いの爆弾を能天気に渡させて、色欲狂いは戻るように指示した。走れもしない仲間を連れて行っても意味は無い。
ショットガンを杖代わりにしたまま、歩いて戻っていった。
…………さて。
行かなくてはいけない。敵を取り逃したとなれば、余り良い事は待っていない。
復讐が待っているかもしれない。
壊滅寸前まで追い込んだ後の復讐で、酷い目に遭ったという事を人間達から聞いた事があった。
それは即ち、仕留め損ねれば、自分達にも被害が及ぶ可能性があると言う事だ。
自分と能天気だけでは心細いが、行かなくてはいけなかった。
爆弾を食らっても、弾丸を幾度もプロテクターで受けても、自分の体は十全に動いていた。痛みはあるが、色欲狂いのような骨折程のものではなかった。
人間達を呼ぶ事も出来ないし、首輪はまだ警戒音を発していない。そしてまだ、ここはミッション区域内でもあった。
走り始めた。
弾丸が腕に当たり、強い痛みが走る。骨からの痛みもあった。
……何度も食らっていられないな、これは。
けれど、歩みを止める訳にも、目と首を守らない訳にもいかなかった。
足に当てられ、また転ぶ。転がって追撃を避ける。立ち上がって、また走る。
足も腕も、腹も痛んでいた。頭も疲れていた。でも、疲労自体はタイラントと戦った前程じゃない。
前回は、今回よりも大量の仲間が投入されて、そしてそれらを犠牲にしながら進んでいった。
何度も仲間を盾にした。爆発に生身で吹き飛ばされた。仲間の血で塗れていた。
その前回よりは、頭も体も、疲れていない。
「―――とかしろ!」
「―――――ンチャーがあります。それを、もっと近付いてから、確実に仕留められる距離になったら」
……うん?
声が聞こえる距離に近付いてきて、聞こえて来た声に、物凄く嫌な予感がした。
……ロケットランチャー? グレネードランチャー?
そうでなくとも、近付くのは危険過ぎた。その兵器は少なくとも、自分達をプロテクターごと破壊出来るものだ。
能天気もそれを聞いて走りを止め、木の陰に隠れた。
どうする? 分かれて向かうべきか。
幸い、残っている人数は少なそうだったが、こっちも少ないのには変わらない。
撹乱も大して出来ない。
爆弾を投げられる距離まで近付いたら、多分相手にとっては仕留められる範囲内だ。どうしようか……。
どちらかが生き残って全滅させる何て選択肢は、能天気とはやりたくなかった。
距離を保っていると、声が相変わらず聞こえてきた。
「後少しで森も抜けられます。そうすれば車を隠してあります。頑丈なので、そこらの銃器でもB.O.Wでも壊せません。安心してください」
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