ハーメルン
生物兵器の夢
19. 殲滅ミッション 7

 途中で振り向くと、さっきより走る速さが速くなっている気がした。追いつかれはしないが、距離も離せない。
 さっきは明らかにこっちの方が速かったのに。
 いや、体型が変わっている? 微妙にそんな気がした。
 片目が攻撃したGは、まだ来ていない。曲がり角を曲がると仲間の死体が複数あった。近くには壊れた機関銃。人間の死体は、無い。
 多分、注射器を打たれてから、殺して、そしてバラバラにしないで放置したんだろう。
 誰だ、この階層を攻めた同期は。
 あんまり責められないが。
 爆弾を転がしてGを転ばせ、その内に仲間の死体から爆弾を補充する。
 片目がその間に追撃を仕掛けようとして、止めさせた。この距離感で丁度良い。Gが起き上がりつつあるのを見て階段へ走ろうと思ったその時、その遠く後ろからもう一体のGが飛び出してきた。
 ……?
 何か、形が違うような。いや、四つ足?
 いや、速い! 明らかに自分達の足より速い!
 爆弾を投げ、また爆弾を補充してから階段へ走る。とにかく、階段室まで行けば良い。そこから先の事は、また考えれば良い。もう一つ曲がり角を曲がれば、階段室が見えて来る。
 後ろから、何かを踏み潰した音が聞こえた。
 四つ足のGが二つ足のGを強引に追い越したのだろう。
 階段室に着く頃にはもう、その四つ足のGが曲がり角から走って来るのが見えて来ていた。

 階段を一気に登る。疲労からか、足がもつれて転んだ。片目がすぐに腕を掴んで起き上がらせ、そのまま背負って上って行った。
 一階分上がった所で狭い階段室の扉に強い衝撃が走った。片目がよろけ、自分も背中から降りた。
 衝撃が二度、三度と鳴り、そして扉ごと壁が打ち破られた。
 ガラガラと瓦礫が崩れ落ちる音。何なんだ、本当にあれは!
 G-ウイルスを打ち込むだけでただの人間があんな風になるってどういう事だ!
 タイラントは、改良に改良を重ねてああなった、って言うのは何となく分かる。自分達だって人間とトカゲを組み合わせただけじゃなく、それ以外に色々とされて作られた生物だ。
 でも、ただ注射を打ち込むだけでああなる、ってどういう事だ本当に!
 もう一階分上り始めた所で、更に激しい衝撃が足元を襲った。
 何だ今度は!
 みし、と階段に皹が入っていた。
 嘘だろ? もう一度衝撃が来て、急いで階段を駆け上る。
 激しい衝撃がまた体を襲った。前に転び、どうにか転げ落ちる事だけは防いだ。
 三度目にして、階段が崩れた。壁に爪を突き刺して、階段を壊しながらその四つ足のGが這い上って来る。
 衝撃に襲われながら、どうにかしてまた階段を這い上がる。最後、一階分。
 這い上がってでも登らなければ、という所で衝撃が直に腹を襲った。一瞬、体が浮いた。
 胃液を吐いた。肋骨が階段と共にミシミシと音を立てた。息が苦しい。
 でも、まだ動ける。どうにか、何とか。
 片目に起こされる。片目も口から胃液を吐き出していた。
 咳き込みながら、爆弾を取り出した。
 どうにか立ち上がって、また上る。二度目の衝撃が体を襲う。足がびりびりと響く。転びそうになるのを片目と支え合って堪える。何度も銃弾を受けた足の骨が痛みを訴えた。片目と爆弾を構えた。
 三度目、階段が壊れてそこに爆弾を投げた。
 階段の隅に隠れて、爆弾が爆発した。

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