ハーメルン
どらごんたらしver.このすば
第18話:デリカシーのないチンピラ

「ふざけんな! なんでミネアを連れていくんだよ! ミネアは家のドラゴンだろ!」

 幼い俺はミネアの前に立ち、下卑た笑みを浮かべる男に叫ぶ。

「知っていますよ。ですが今は非常事態……魔王軍との戦争中なのです。上位ドラゴンがいない今、最高戦力である中位ドラゴンを遊ばせているわけにはいかないのですよ」
「遊ばせるって……ミネアは俺と契約するんだ。国のために働けって言うなら働くからそれでいいだろ」

 両親が命懸けで俺に残してくれたドラゴン。俺にとって相棒であり家族であるミネアを連れていかれまいと幼い俺は必死だった。

「面白いことを言いますね。国の最高戦力である中位ドラゴンを何の実績もない10歳の子供と契約させる? そんなドラゴンを殺してしまうような危険を犯すくらいなら遊ばせていた方がましですよ」
「どうやってもミネアを連れていくってのかよ……っ!」
「最初からそう言っていますが?」

 短いやり取りの中で幼い俺は理解してしまう。ミネアを連れていかれるのを止められないと。
 目の前の貴族が言っていることは暴論ではあるが理屈は通っている。その理屈を国が正論として認めてしまっているのであれば、それを覆すことは難しい。
 口八丁に振る舞えば、この場は追い返して時間を稼ぐことは出きるかもしれない。だが、出来るのはそれまでだ。国の正論に何の実績もない子供の正論では結果は見えている。

「……ミネアは国の保有ドラゴンになるんだよな?」
「そうなりますね」

 俺の故郷の国において。ドラゴン使いはその実績に応じて国が保有するドラゴンと契約する機会が与えられる。

「だったら俺が実績を……国が無視できないくらいの功績をあげれば、ミネアと契約できるはずだ」

 連れていかれるのが止められないのなら。俺とミネアがまた一緒にいるためにはそれしかない。……馬鹿な――まだあの国の貴族の悪辣さを知らなかった――俺はそう考えた。

「そうですね、ドラゴンナイトにでもなれば認めるざるを得ないんじゃないですか」
「……だったらすぐだな。俺のステータスならあともう少しでドラゴンナイトになれる」

 この時の俺のレベルは15。力のステータス以外は既にドラゴンナイトになれるだけの水準を満たしていたし、力も20レベルになるまでには届くだけの高さがあった。

「ほぉ……それは凄いですね。ドラゴン使いの素質を持ったものはステータスが著しく低いのが特徴だと言うのに。流石はあの男の息子と言ったところですか。…………まぁ、この国でドラゴンナイトになるにはそれだけじゃ資格が足りないのですが」
「……資格?」
「? 知らなかったのですか? この国において『ドラゴンナイト』の職に就くには資格が必要なことを。具体的には『ドラゴン使い』の職に就いてる状態で国が指定したクエストを500件達成することで資格を得ます」
「……なんでそんな制限があるんだよ」

 500という数が多いのか少ないのかは分からないが、すぐに達成できる数でないのは確かだ。

「普通に考えれば当たり前の話だと思いますがね。『ドラゴン使い』はまだ弱点が多く対処が可能ですが『ドラゴンナイト』には弱点などなく強大な力を持つ。そんな職になんの制限もつけないなど正気の沙汰ではありませんよ。力を悪用されれば盗賊などよりも多大な損害を国に与える」

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