第8話 硝煙の残り香
まるで巨人の槌で叩き壊された様にぽっかり空いた城壁、そして、火山弾が降り注いだが如く破壊の跡が生々しく残る大陸のとある城塞都市。
大陸の近海に突如出現した謎の島国による、突然の襲撃により、その城塞都市は、都市機能の大部分を崩壊させ、多くの死者を出した。
その国は、太陽を模したという白地に赤い丸の描かれた旗を掲げ、この都市国家の主を公開処刑し、この周辺地域の支配者となった。
だが、彼らは何の理由もなくこの城塞都市を襲撃したわけではなかった、この大陸に初上陸した時、この国の人さらい部隊による襲撃を受け、撃退し、それの抗議の為に使者を送ったのだ。
しかし、この国の主は名も知れぬ蛮族と彼らを侮り、自衛のための武器を一切持たず、丸腰で訪れた愚かな使者を張り付けの刑に処した。
その事を知ったかの国は、烈火の如く怒り狂い、太古の昔に失われたという究極魔法を彷彿させる、圧倒的な魔導でこの城塞都市を一夜で滅ぼしたのだ。
そして、彼らはこの都市国家を再建し、この大陸の足掛かりとなる拠点を築こうとしているのであった。
「負傷者の方は、あちらの天幕へ移動してください!」
「食糧の配給は、中央広場にある大きな天幕です、列を乱さないでくださいー!」
「あの・・・ニッパニアの兵士様、本当に私たちに食べ物を分けてくださるのですか?」
「娘を医師様に本当に診せて頂けるのでしょうか?私は奴隷身分を返上したばかりの解放奴隷です・・・差し出すものは何もありませんのですよ?」
「お終いだ・・・俺は見たぞ・・・連中は、意識を失った者に怪しい管を刺していたのを。き・・きっと、この国の人間を何かの実験材料にするつもりなんだ・・・。」
「まったく、何でこの国の連中はこうも臆病なんかねぇ・・・俺たちを見ると何もしていないのに道の隅に寄って土下座してさぁ・・・。」
「今まで相当、国に絞られて来たんだな、しかも、俺たちは一夜でこの国を降伏させた謎の襲撃者だ、言葉も殆ど通じないのも相まって恐怖の対象だろう。」
「不幸中の幸い、海の国の人達と言葉が共通しているから翻訳もギリギリ間に合ったし、一部の奴らも異世界言語を習得している、市民の誘導は連中に任せておこうぜ。」
「はぁ、近いうちに異世界言語が必修科目になるかもな・・・・いや、確実になるな。」
「本当にこれからどうなるんだろうな、俺たちの国は・・・石油もまだ見つかっていないし。」
復興支援に派遣された自衛隊員たちは、けたたましく鳴り響くエンジン音を出しながら、壊れた城壁を覆うように掘り返す重機群を眺めつつため息を吐いた。
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