第5話 宴
史上最高の魔法使いは誰か?
数え切れないほど論じられてきた議題だ。
魔法界に生まれた者なら、誰もが一度は「偉大な魔法使い名鑑」を片手に、自分の思う最強の魔法使いを熱弁した事だろう。
ペベレル三兄弟。
ゲラート・グリンデルバルド。
アルバス・ダンブルドア。
ヴォルデモート卿。
そして――ホグワーツ創始者達。
誰も彼もが魔法界のオリンピック級アスリート達。
この中の誰が最強に選ばれたとしても、納得がいくだろう。
しかし、アルバス・ダンブルドアは思う。自分はまだまだ彼らと肩を並べるには程遠い、と。
晩年のゴドリック・グリフィンドールが残したとされる『組み分け帽子』は、言って見れば『開心術』に特化させたマジックアイテムだ。
心だけではなく、身体能力や潜在能力、果ては血の歴史まで読み取る事が出来る規格外の魔法が込められているが、とにかく広い分類をすれば『開心術』なのである。
更には明確な自我までもが付与されており、驚くべきことに1000年たった今でも魔法が衰える気配はない。
果たして、自分はこれほどのマジックアイテムを作ることが出来るだろうか?
答えは否。
共同開発とはいえ賢者の石を作ったダンブルドアでさえ、組み分け帽子を再現することは不可能だった。
それどころか、組み分け帽子の『開心術』を逃れる事すら出来ないのが現状である。
それが、しかし――
「もう一度聞くがの、本当にあの一年生が貴方の『開心術』に対抗したと」
「左様。私はあのショーン・ハーツという少年から何も読み取れなかった。こんなことは、私の帽子生では一度しかなかったことだ」
信じられないほど強力で複雑なプロテクト。
例えるなら、イギリス中をランダムで瞬間移動し続け、見つけたとしてもダイヤモンドの鎧に覆われている上に、ドラゴンの群れに守られている様な感じだ。
ショーンの心はそのレベルで保護されていた。
組み分け帽子の『開心術』では、ショーンの心が何処にあるのかも分からなければ、護りに傷をつけることも出来なかったのである。
「過去の一度は……」
「ホグワーツ創始者のお方々の一人、ヘルガ・ハッフルパフ様だよ。あのお方の『閉心術』を破れる方は、一人としていなかった。私は勿論、創造主であられるゴドリック様もだ」
ホグワーツ四強の1人、ヘルガ・ハッフルパフ。
魔法界史上最高の治療者として知られる彼女だが、心術系魔法の名手だったという記録も残っている。
その彼女と同等の心術使い?
それも一年生で?
あり得ない事だ。
しかもその少年は今まで、マグルの世界で過ごしていたときている。
「加えていうなら、ゴドリック・グリフィンドール様の剣――あれも一般に知られている方法で取り出されたモノではない」
「ふむ。つまり……」
「当然のことだが、アレはゴドリック様の所有物。真のグリフィンドール生に抜けるとはいえ、それはあくまで貸し出しに過ぎぬ。だがあの小僧は……ゴドリック様にしか出来ない、正規の抜き方であの剣を得た。
そうだな。図書館で本を借りて読むのと、本屋で買って本を読むくらいの違いがある。結果は同じ様に見えても、その所有権の強さは比べ物にならん」
例えばの話だが、真のグリフィンドール生が同時に二人いたとしよう。
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