第5話 ……なん……だと!?
あるデュエルリングの一角、黒いコートとフルフェイスのヘルメットのようなものをかぶった神崎は「とうとうこの時が来たのか」と内心頭を抱えていた。
神崎がこのような恰好をしている訳は――少し前に遡る。
いつも通りに取引に来た神崎に対し、相手が契約の際に「デュエルに勝ったらこちらの条件をすべて飲んでもらう」などと言い出したからである。
「またか……」と思いながらもこういったデュエルから逃げる人間をKCの株主が好まないため受けるしかない現状がある。
ゆえに神崎は「KC側が勝利した場合は本来の契約よりいろいろと割高にする」といった相手側にもデメリットを与えることで極力勝負を避けようとしているのだが相手側が勝負を降りたことは今まで一度もない。とんだ「デュエル脳」だ。
その勝負の方式はそれぞれデュエリストを3人用意した団体戦による勝ち抜き戦形式で戦うものである。
だが、雇っていた2人のデュエリストが相手方の最後のデュエリストに敗れたため後がなく、敗北した際の損害を防ぐため、前世の知識と様々なカードを集められる立場を用いて確実な勝利を得るために神崎はこの場に立ったのである。
そんな神崎が素性を隠すかのような恰好でデュエルリングにいる訳は正体を隠すことで神崎が闇のアイテムを持つデュエリストと闇のゲームのターゲットにされるのを防ぐこと、
そして「謎のデュエリスト」という強キャラ感を出し「心理フェイズ」でのアドバンテージを期待してのものである。
そうこうしているうちに相手方のデュエリストも到着し「デュエル」が始まろうとしていた。
相手方のデュエリストはその筋肉質な肉体を前面に押し出し相手を威嚇する。
「俺の名はマッドドッグ犬飼。テメェを倒す男の名だ! よく覚えときな!」
だが神崎は緊張のあまり声が出ない。
「……チッ、だんまりか。まあいい、行くぜ……デュエル!!」
そんな神崎をよそにデュエルが始まり「デュエルリング」により先攻後攻が決められる。
「テメェの先行だ」
わざわざ教えてくれるマッドドッグ犬飼――実は面倒見がいい人なのかもしれない。
だが神崎はそれどころではなかった。
カードを引く前に手札を見た神崎の心は折れそうになっていた。その手札は緑一色、すべて魔法カードでありその内容は――
《二重召喚》
通常召喚を2回行える
モンスターがいないのにどうしろと!
《帝王の開岩》
アドバンス召喚成功時、特定のモンスターを手札に加える
だからモンスターがいないのにどうしろと!
《帝王の凍気》
特定のモンスターが自分フィールドに存在する時、セットされたカードを破壊
だからモンスターがいないという(ry
《真帝王領域》
モンスターの強化と手札のモンスターのレベル操作
だからモンスターが(ry
《進撃の帝王》
このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドのアドバンス召喚したモンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない。
だからモン(ry
……なん……だと!? と思わざるを得ない酷い手札事故であった。
[9]前書き [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/6
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク