第12章 反撃の焔
空高く。
奇跡を起こす輝き。
(これは……まるで……)
騎士は熱く風を巻き起こし、舞い上がる。
(フュージョン──)
天海護はその光景に、不思議な既視感を抱いた。
「いくぞ、アギト!」
シグナムは腕を広げ、融合騎へと合図した。
「おうっ」
胸を高鳴らせ、アギトは新たなロードに応える。
二人の身体が重なった。
「「 ユニゾン・イン!! 」」
古代ベルカの騎士に、アギトが溶け込んでいく。
(熱い……!)
シグナムの裡にあるものに触れ、アギトは震えた。
普段はクール然としたシグナムだが、その胸には、常に燃え盛る火焔が渦巻いていたのだ。
(これ……っ)
融合騎はロードと一体化しながら、力を同調させる。
肉体、魔力、そして記憶──
シグナムの全てがアギトのものと融合する。
(昔、昔の……遥かな記憶?)
アギトの脳裏にフラッシュバックするイメージ。
途切れ途切れのそれらは、戦乱の時代を描いていた。
(シグナムが、見てきた……戦いの……)
流れ込む記憶。そして想い。
(闇の──いや、夜天の書の、守護騎士……ヴォルケンリッターの将──)
主との、出会い、別れ。喜び、悲しみ。死闘、敗北。勝利、消滅。絶望と──
アギトは膨大な記憶に押し潰されそうになった。
(──希望)
シグナムが最後に出会った希望。守るべき希望。
贖罪。
「騎士の……剣に誓って……」
守り、戦う。
「あぁ。あんたは……やっぱり、あたいに似てた……」
この身を託すに足る、主に出会いたい。
「自分の全てを受け入れてくれる……主──」
アギトの魂に温もりが拡がる。
「戦う為だけに生まれてきたあたい達にも、幸せをくれる人は、いるんだな……」
シグナムの中にも、アギトの想いが伝わる。
実験による苦痛。覚えていない過去。長きにわたる孤独。ロードなき融合騎の寂寥。
世界のどこかに自分を使ってくれる主が、きっといる。
ゼストと出会い、初めて幸福を手に入れたと思った。
だけど、ゼストは──
「お前は、こんなにも羨望と絶望を小さな胸に抱えていたのだな……」
アギトの心を見つめ、シグナムは吐息した。
「ならば。私がお前に希望を与えてやる」
己の中に入ってくるものに、強く語りかけた。
「かつて、私が主はやてから与えられたように」
「あぁ……!」
あるいは、星と雷が夜天に与えたように……
「お前にあたいの全ての力を!」
想いと炎が、一つになった。
融合が加速する。
ユニゾンにより、シグナムの外見がかなり変化していた。
騎士服は上着が無くなり、色は青紫色になる。篭手は金色で、髪が薄桃色に変わり、ポニーテールを結ぶリボンも形を変えていた。瞳は薄い紫だ。
背には炎の四枚翼が生え、融合は完了した。
(……力が、満ちる)
(……力が、重なる)
((……力が、溢れるッ!))
そうして、新たなる騎士──アギトユニゾン・シグナムが誕生する。
その姿を皆は声もなく、振り仰いでいた。
「おい──シグナム!」
沈黙を破ったのは、ヴィータだった。
静かに佇んだシグナムに、ゾンダーの拳が飛ぶ。
「──ふっ」
レヴァンティンを上段に構えた。
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