第16章 雷光撃つ
赤の星で産まれた艦たちの戦いは、ES兵器の応酬よりスタートをきった。
「J!」
超弩級戦艦ジェイアークはアースラの身を庇う様に軌道を変え、敵の巨大な飛行空母ピア・デケム・ピットと応戦した。
ソール11遊星主の旗艦ともいえるピア・デケム・ピットは、ジェイアークにも匹敵するほどの戦闘能力を有する。
「こいつの相手は、私が引き受けた!」
Jは創造主・アベルと対決する意思を告げた。
ESミサイルが互いの艦体から発射される。空間跳躍能力を持つこの兵器は、エスケープ空間を通過する事で、ミサイルは障害物に邪魔されずに目標を直接、爆破できるのだ。
光爆の連鎖が、闇の世界を鮮やかに照らしだす。
それは美しくも戦慄を伴う光景だった。
強力なジェネレーティングアーマーと自己修復力があるピア・デケムとジェイアークはさほどのダメージを受けずに、軽度で済んだ。
しかし、はやてが指揮するアースラ等、管理局の次元航行船は防戦一方であり、被害もあったようだ。
「反中間子砲!」
主砲斉射をJは指示した。
アベルもまた、ピア・デケムに次の攻撃を命じた。
「小型艦載機を出しなさい!」
空母の甲板から、夥しい数の艦載機が飛び出してきた。
これは無人で動く兵器であり、ピア・デケム・ピットは内部でこれを無限に生産する事ができる。ジェイアークは、反中間子砲、十連メーザー砲を駆使して撃ち落とそうとした。
ガジェット同様、感情なき兵器ゆえに、我が身の大破を顧みることない体当たりを仕掛けてくる。
ジェイアークの迎撃により次第にその数を減らしていくが、殲滅には時間がかかる。
「はやて、早く……ピサ・ソールに向かえ!」
Jは後方で防御陣形を取るアースラに言った。
「アベルは私が倒す。貴様は一刻も早く、ピサ・ソールを……」
アースラと他の管理局の艦艇は、特に武装を施してはいない。もともと、管理局には戦艦という概念が希薄である。古代ベルカならいざ知らず、現代のミットチルダには質量兵器を抱える理由がない。
ただ、アースラには魔導砲・アルカンシエルが装備されている。これは対象を完全に殲滅するためのもので、過去に《闇の書》の防御プログラムを破壊する等に使用されていた。
強力すぎるため、おいそれとは使えず、管理局から許可が下りないと発射できない。
例えば、GGGがバイオネットの獣人にゴルディオン・ハンマーを振るえないのと同様に、対生物に使うのを暗黙的に禁じられていたのだ。
また、チャージにも時間がかかる。
ピア・デケムに放っても、威力が大きすぎて、人質となった戒道幾巳やヴィヴィオまで消滅させてしまうだろう。
むしろ、それはピサ・ソール破壊に使うべきだ。アースラには、それ以外にも対ピサ・ソール用の装備が積まれている。
「ここで貴様らができる事など、たかがしれている」
いささか、辛辣な口調ではやてに言う。
「ピア・デケムを抑えるのは、我等に任せてもらおう!」
「わかった」
はやては頷き、艦隊に全速力でピサ・ソールの方向を目指すように指令する。
「ピサ・ソールに向かうつもりですね。なれど……」
アベルは、控えていた遊星主たちに出動を命じる。
「私たちに刃向かう愚かな連中を、撃破してくるのです!」
ピルナスを除いて、一言も発さず、遊星主たちが次元の海に乗り出す。
艦外に出た遊星主はパーツキューブで移動し、滑る様に管理局艦隊に近づく。
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