第18章 母と娘
闇のなか、金の髪の色がよく目立った。
(なんで──)
胸中、八神はやては嘆息する。
(あともう少しで着くっちゅうのに……)
ピサ・ソールまであと一息という所でアースラは、パルパレーパの妨害に遭った。
立ちはだかる遊星主は無防備な様子で浮かんでいる。
「生憎だが、いまピサ・ソールに近づいてもらうわけにはいかん……この場に一人残らず沈むのが貴様たちの運命」
「どんな運命やねん……?」
「神が定めし運命だ」
パルパレーパは冷笑を口端に刻みながら、軽く腕を上げる。
「……フュージョンするんか!?」
パルパレーパはパーツキューブとケミカルフュージョンすることにより、巨大ロボ・パルパレーパプラスとなるのだ。
「貴様らの相手は私ではない。さぁ、出てくるがよい……聖王の器よ」
忽然と現れた少女。
長い金髪に、左右色違いの瞳。いにしえの聖王の遺伝子から誕生した、古代ベルカの遺産を継ぐもの。
「ヴィヴィオ!」
聖王の少女は無表情に構えた。ベルカ式の格闘技、シューティングアーツの構えだ。
「さぁヴィヴィオ、戦え。貴様を狙う敵と、な」
「あいつ、ええ加減なことぬかしよるわ!」
「……やはり、ケミカルボルトに操られてるんでしょうか?」
ルキノがはやてに訊いた。
「おそらく……護くんが言うには、連中の常套手段らしいわ」
硬い表情ではやてはなのはに視線を移す。
なのははモニターに映るヴィヴィオの顔を凝視している。
「レリックがヴィヴィオの力の源やけど、ゆりかごの内部じゃなければ、聖王の本来の力は発揮できないはず」
あくまで推測にすぎない。
だが、その存在そのものが動揺を誘うものではある。
パルパレーパはヴィヴィオを出すことでこちらの攻撃をためらわせ、戦意を削ぐのが目的に違いない。
「なのはちゃん……」
「部隊長。私に出撃許可を」
「ほんまに、ええんやな?」
確認する様に、はやてが問うた。
「はい」
なのはの瞳に不動の意思が宿っていた。
聖王のゆりかごに挑んだ時、すでに決めていた覚悟。
ヴィヴィオを救う。そのためならば、どんなものとも戦う。
たとえそれがヴィヴィオ自身だとしても。
「次元の海の中で戦えるのは、私だけです」
「よし……わかった」
もはや、親友の新しい力に頼るしかない。はやては心に決めた。
「高町なのは隊長の出撃を承認や!」
「レイジングハート!!」
勇躍してなのははレイジングハート・ジェネシスを起動。
《Fusion Mode》
ヴィヴィオもなのはも特殊な防御フィールドを防護服の周囲に展開することで、次元の海で生じる生体への影響から自身を守っていた。
「ふふふ……そうだ。戦うがいい」
パルパレーパは距離を開けて、二人の戦闘を見守っている。
アースラのクルーも、
母と娘の戦いに固唾を飲む。
「いこう、レイジングハート」
なのははいきなり砲撃で攻撃しようとする。
が。
ヴィヴィオは神速で間合いを詰め、なのはに近接技を仕掛けてくる。
「く……速い!?」
「たぁぁぁっ!!」
魔力を乗せた拳が急所を襲う。だが、そこはスバルを育てたなのはだ。
砲撃魔導師ではあるが、近接戦闘の心得もある。戦技教導官時代の経験がものを言った。
ヴィヴィオの攻撃は速く的確。しかも当たれば大きい。
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