第4章 再会
見霽るかす大海原、高く晴れ渡った青空が、視界いっぱいに広がっていた。柔らかい風が頬を優しく撫でていく。
ミッドチルダの海上に大きな施設が設けられていた。
主に若年犯罪者を収容する海上隔離施設である。
その、施設のなかを、一人の女性が歩いていた。
時空管理局陸士部隊の制服を着た、髪の長い清楚な女性。
ギンガ・ナカジマ陸曹。108部隊に所属する陸戦魔導師である。
「あら」
ギンガはこちらの方へやって来る、小柄な人影に気づいた。
キョロキョロと不慣れな視線で、施設を歩いていく。
「キャロ」
ギンガは人影に向かって声をかけた。それに気づいたキャロが、
「ギンガさん!」
ぱたぱたと、ギンガのところに駆けてくる。
「おはようございます」
びしっと敬礼しながら、キャロ・ル・ルシエ三等陸士は挨拶した。
「きゅくるぅー」
主の真似なのか、キャロが連れている小さな竜、フリードリヒも鳴き声を上げた。
古代遺失物捜索部隊機動六課・フォワードチーム最年少の10歳。
セミロングのややくせのある髪に、あどけない顔立ちの少女である。
ギンガの妹スバルの同僚にして、ライトニング分隊の竜召喚士。コールサインはライトニング04。管理局員の制服を着ていても、ビシッとした印象より可愛らしさの方が際立っていた。
「おはよう、キャロ。今日はエリオと一緒じゃないのね?」
「はい。みんなは首都の警備のために、市街地の方に行ってます」
JS事件からまだ一日しか経っておらず、街の治安を懸念する地上部隊からの応援で、機動六課も警備や交通整理などに協力していた。
といっても、フォワードを率いる高町一等空尉やヴィータ三等空尉は、事件での負傷と疲労のため、動くことを禁じられていたのだが……。
「あの、遊星主とかいう敵を警戒して、みんなかなりぴりぴりしてるみたいでした」
と、キャロの説明を聞き、ギンガはそう、と、頷いた。
JS事件が終わって、まだ二日目。事後処理を含めて管理局は対応に追われていた。まして、遊星主という未知の敵が表れたからには……。
「それでキャロはどうしてここに?」
「ルーちゃんに会いに──」
「あぁ。ルーテシアね」
J・スカリエッティに手を貸していた召喚魔導師の少女。
ルーテシア・アルピーノ。
「ルーちゃんに伝えたいことがあるので、ギンガさんに頼みにいこうとしてたんです」
ギンガは事件集結後、海上隔離施設で捕まった戦闘機人たちの再更正プログラムを担当することが決まっていて、その前段階として、戦闘機人たちと話をよくしに行っていた。
自らも戦闘機人《タイプゼロ・ファースト》であり、一度は洗脳されて『13番目のナンバーズ』となった彼女だからこそ、更正プログラムの担当者には適任と言えた。
「直接、伝えるわけにはいかないの?」
「えっと、どうしても、私から伝えたくて……それに、ルーちゃんの様子も知りたかったし……」
もじもじと、キャロはギンガに言った。
「そう。それで一人で来たのね」
「はい」
まっすぐに彼女の目を見て、キャロが答えた。
淡い笑みを浮かべ、ギンガは頷いた。
「わかったわ。私に着いてきて」
と、施設内の案内を引き受けてくれた。
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