ハーメルン
魔理沙のタイムトラベル
第18話 レミリアの願い

「ねえ、パチェ~ちょっと聞きたい事があるんだけど――!?」

 私と目が合うと、レミリアは口をあんぐりと開き、面白いくらいに驚いていた。
 心の中でその反応を楽しみつつ、私は旧知の友人に声を掛けるような態度で口を開く。

「よぅレミリアじゃないか。久しぶりだな? 元気か?」
「魔理沙!? あなたどうして……!」
「実はな――」

 私の元へ一直線で向かってきたレミリアに、これまでの事をかいつまんで説明した。

「そんな、貴方は別の世界からやってきた魔理沙だと言うの!?」
「別の世界――うん、まあそうだな。たぶんそれが一番しっくりくると思う」

 本当は大分違うのだが、そこを説明するのも面倒くさいのでとりあえず肯定しておく。

「彼女の話は本当よ。さっき時間移動魔法の理論を簡単に聞いたけど、この私ですら理解できない魔法理論を展開してたもの。これが嘘なら詐欺師の才能があるわね」
「おいおい……」
「……そうなの。でも、これは願ってもないチャンスかもしれないわね」

 そうポツリと呟いたレミリアは、佇まいを整え、私の顔をはっきり見たうえで発言した。
 
「ねえ、魔理沙。私を過去に送ってくれないかしら?」
「! レミィ!」
「過去にだって? 何故だ?」

 妙に動揺しているパチュリーが気になるが、今は不可解な事を言いだしたレミリアの方が気になっていた。

「魔理沙、十六夜咲夜って名前のメイドがいた事を覚えてるかしら?」
「お~よく知ってるぜ? この世界でも140年前に亡くなったらしいな?」

 早逝だったことを覚えているし、ついさっきも彼女の話題があがり、思い出話に花を咲かせていた所だ。
 
「私はね、咲夜の身をもっと案じてあげればよかったと、亡くなってからずっと後悔してたの。だからお願い! 一度、一度でいいから咲夜に会って謝りたいの!」 

 今にも泣きそうな表情で懇願してくるレミリアに、私はきっぱりと告げる。

「残念だがそれは出来ない相談だ」
「なんでよ!?」
「レミリア、お前は確か〝運命を操る程度の能力″を持っていたよな?」
「それが何か関係あるのかしら?」
「時間移動ってのはな、非常にデリケートなんだ。そんな魔法とお前の能力が合わさってみろ。相乗効果が起こって、時空の狭間に落ちてしまうかもしれないんだ」

 時空の狭間は全くの無が支配し、時間の概念がなく、永遠にそこから抜け出す事が出来ないとされている。もしそこに落ちてしまったら只事では済まない。

「さらに付け加えていうならな、因果律ってしってるか? 時間移動と運命操作の共通点はそれを操作する事だ。そんな似た力を持った存在同士がぶつかれば、ただではすまないんだ」
「私はそれも覚悟の上よ!」
「お前が良くても私は嫌だよ! そんな危険な賭けに乗る事はできん!」

 実際この魔法の実験の最中、何度か向こう側へと引っ張られそうになったのだ。あれだけは二度と起こしてはいけない。

「魔理沙の意見に私も賛成するわ。きちんと話の筋が通っているし、恐らく本当の事だと思うの」
「パチェまで!? そんなぁ……うぅぅぅ」

 その場に泣き崩れてしまったレミリアは、いつもの傲岸不遜な態度ではなく、一人の少女のような反応をしていた。それになんとなく気まずさを感じてしまった私は、こんな提案をする。

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