じゅうろくにちめ
「のぉ提督よ、一つ聞いても良いかの?」
「ん? 何だ利根」
「お主は一体何をしておるのじゃ?」
「あ? 見て分かんねーか? 弓に弦張ってんだよ」
「いやそんな物は理解しておるわ! 我輩が聞きたいのは何で真昼間っからお主は工廠に引き篭もって弓なんぞを工作しとるのかと聞いておるのじゃ!」
「あん? んなモン狩りする為の道具が必要だからに決まってんじゃねーか、お前はアレか? これ見てえっと……クマノンだっけか? アイツが言いそうな感じでバイオリンを弾く為に弓作っているんですのよホホホみたいなボケた事を言い出したりすんのか?」
「それ本人に言ったらぶっ飛ばされるぞお主……て言うかじゃ、我輩が言いたいのは何で海軍の提督ともあろう者が、狩りだの何だのと言うて弓をこしらえておるのかって事なのじゃが」
「いやお前狩りしないとどうなるか分かってんの?」
「……どうなるのじゃ」
「食卓からお肉が消えて、野菜とお魚オンリーになっちまうじゃねーか、分かってんのか?」
「ああうん、お主はもうここに居る限り自給自足が当たり前という思考がデフォになっていると言うのは充分理解したぞ……」
「まぁそんな訳で豊かな食卓の為に俺は努力してるんだ」
「ああまぁお主の何と言うか間違った方向にひん曲がった努力は取り敢えず置いておくとしてじゃ、そんな物今更作らなくても既にここにはボウガンとか色々あるじゃろ? 何で今更弓なんぞ作っておるのじゃ」
「バッカお前ボウガンと弓一緒にするんじゃねーよ」
「……何が違うというのじゃ」
「基本的にこの弓とボウガンの弦は同じ張力で張っている」
「ふむ、それで?」
「でと、そうなった場合弦を張る本体の大きさは当然弓の方がデカくなる訳だ」
「ああまぁ確かにの」
「で、物理の法則に従うと、同じ張力で弦を張った場合、本体のデカい方がより威力が増し、また射程距離が伸びるって寸法だ」
「なんでお主はそう偏った部分で学術的なんじゃ、と言うかボウガンより飛距離とか威力が増したらどうじゃと言うんじゃ」
「お前俺の話聞いてた? 飛距離が伸びればそれだけ獲物を遠くから狙える、そうなったら安定してお肉の供給が出来る、な?」
「な? じゃないわっ! 何で海軍提督がそんな狩人染みた思考で食卓の改善を全力で行っておるのじゃ! おかしかろ立場的に!」
「まぁそうカリカリすんなよ、この弓は食卓のお肉を安定供給させるだけじゃなくてよ、ちゃんと軍事的利用も考えて作ってんだぞ」
「ほぉ? お肉と軍事的な利用目的を混ぜるとか、どうすればそんなおかしな思考になるのかはこの際どうでもいいとしてじゃ、その軍事利用とはどういった物なのじゃ?」
「お前ラ○ボーって知ってるか?」
「ああそう言えばお主昨日そんなDVD見ておったな……って言うかアレか? 弓矢の先にドリルっぽい何かを装着して、ヘリでも落すとか言わんじゃろうの?」
「既にその辺りはピエトロが解決済みだ」
「何でも妖精が絡めば解決するみたいな流れはどうなのじゃ! むしろ弓でヘリ落すとか普通の人間は真面目に考えんぞ!」
「妖精じゃねーよ、ピエトロだっつってんだろ!」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク