番外編「とある時代のとある覚妖怪」
実際、それが普通のことなんでしょうけど…
だからと言って目の前にいる儚い命を放っておくなど私にはできない。
偽善だって?大いに結構やらない善よりやる偽善です。
「その子に手を出すのはやめなさい」
とはいえど辞める気など無いようなので、そこらへんにある小石を蹴り上げる。
空中に弾きあげられた小石に妖力を纏わせる。
そのまま撃ち出す。
「「ぎゃああああ!う、腕がああああ‼︎」」
ぶん殴っていたその豪腕な腕に風穴が開く。
「てめえ!何しやがる‼︎」
警告はしましたと?やめなさいと…それでもやめないようですので実力行使するだけです。
言っておきますけど手加減なんてしませんよ?と言うか手加減なんて出来ませんよ。
蹴りをかましていた一人がこっちに向かってその巨体を動かす。
十分に距離を取っているためそこまで危険ではないが…早めに全員潰しましょう。
再び空中に舞いあげた小石を弾き飛ばす。
同時にレーザーを撃ち三人が連携して攻撃してくるのを防ぐ。
まああの妖怪たちに連携など出来るわけも無いのですがね…
お燐が後ろ側から合図を送ってきた。
準備完了さっさと終わらせてしまいましょ。
数分ほど響き渡った断末魔が消えた時、森は想像以上に静かになった。
布がこすれる音がして続いてずり落ちる音がする。
「あ、起きましたか」
返事は返ってこない。
彼女を助けた後にゆっくり休める場所に行こうと言うことで近くにあった空き家にお邪魔している。
空き家なだけあってかなり荒れてはいたが住めないレベルではなかった。
(お、起きたみたいだね)
お燐が窓の外から部屋に戻ってくる。
「……?」
(へえ、こうしてみると可愛いんだねえ)
そう考えながら頭の上に乗っかろうとするお燐。
だがくすぐったいのだろうか、肩に乗っかった時点で振りほどかれる。
(ふにゃ⁉︎)
「あー…なんかすいませんね」
謝罪をするが向こうから返事は来ない。
送ろうと思っても送ることが出来ないのだろう。
隙間から出たサードアイが心を読もうと必死になる。
同族同士は心が読みづらい。読めなくはないのですが能力同士が干渉してしまい上手く見ることができないのだ。イメージとしてはノイズがかかって上手く写らないテレビ画面のようなものです。
この場合考えていることがわかるようになるまで少し時間がかかります。
「ああ、無理に喋ろうとしなくて大丈夫です」
「……?」
傷の手当てをしている時に気づいたことなのですが彼女は、喋ることが出来ないようです。
よくわかりませんが…声帯が引きちぎられたかのようにすっぽり無くなっています。
生まれた直後に心無い妖怪に引き千切られたみたいです。
(そうか…同じだったのね)
ようやく読めるようになってきた。
「私も同族に会うのは初めてです」
(なかなか珍しいわね…)
確かに珍しいでしょうね。さとり妖怪同士が解析するなんて滅多にないことですよ。
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