ハーメルン
古明地さとりは覚り妖怪である
depth.6さとりの家事情は考慮されない

月明かりが色のついた木々を照らし赤や黄色に色気付いた山肌を幻想的に照らしている。

日の光を浴びている時よりも鈍く…そして銀の色を反射する紅葉もまた見ていて心を奪われる。
ふと顔をあげればそこは埋め尽くさんばかりの星屑が集まっては地上の静寂を無視するかのように賑やかにしていた。

前世知識を使えばあれがなんの星かは少しだけわかるかもしれない。でもそんなのどうでもいいしこの時代には概念すらないかもしれない。そんな事はどうでもいいと思ってしまう。



いっときの季節の一瞬の時間…でも生きている限り何度でも回って来る。


その光景を見ながら私は近くの岩場に腰を下ろす。

今夜は月が綺麗だ。

ここにきて何年経っただろうか…冬越えの回数は二桁に入った辺りでやめた。だいたい20年以上はここにいるのかもしれない。

その中で出来た唯一のお気に入りの場所です。



豊郷耳達が旅だった後…折角だからいろんなところに行こうと思い立った。
本当はあのまま街にいても良かったのですが…なかなかそうもいかないんですよね…あの後すぐ警備が強化され街に入ることも難しくなってしまいましたし…

私が住み着いていた木も封印されてしまいましたからね。

まあ思い入れがないわけではないのですがこうなっては住めません。
猫も妖力を孕んで来てこれ以上は街に近づけなくなってしまうかもしれないと言っていたからいい機会でしたね。






まあ…気が向いたらなんか適当に人を襲ったり助けたり妖怪っぽくなんか暴れたり逃げたりしながらなんとなく猫との日々を消化するくらいでしたが…

あと偶に服を作ったりフードを作ったり…

数年くらい放浪していたら丁度ここにたどり着いた…いや、結局ここに流れ着いたって言った方がいいのかもしれませんね。

他のとこはあまり気が合いませんでしたし…うっかりさとり妖怪とバラして死にかけたこともありましたし

自分でトラウマ作ってどうするんだって話ですけど

それにしてもここはいいです…近くに天狗の縄張りがある為かあまりガラの悪い妖怪とかいませんし、こっちも節度を守っていれば襲われないことが多いですし…

何より…前世知識がここで反応しています。おそらくここがあの妖怪の山なのでしょう。

そういう理由も相まってかかなり前に頑張って家を建てた。

家って言っても小さな小屋みたいな感じだ。あまり大きすぎると天狗とか他の妖怪に睨まれますし…生活に困らないので別にこのくらいでいい。

他にも色々大変なところですけど…いいところではありますね。

天狗が怖いとかよく言われますけど…
私はあまり天狗とは関わらないようにしているから分かりませんが…

え?まあ偶に哨戒している天狗は見かけますけど向こうが興味ないのかなんなのか…全く相手にしないですね。

え?まあ…対空カモフラージュはしてますよ草木をはっつけた布をばさっと被せるくらいには。別にそれがどうしたんですか?


まあそんなことはどうでもよくて…今はゆっくり夜景を見ながら酒を飲むことにしましょう

せっかくいい酒が手に入ったんですからね。

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