depth7.さとりと鬼と少しの戦い
わからないですし今出す必要はない結論でしょう。
「そろそろ現実逃避もいいかな?」
「え…?ええ、だいぶ落ち着きました。ええっと、酒呑童子…いえ伊吹萃香さんでしょうか」
一瞬、空気が凍った。
私も不味いと思った。え?待ってなんであんなことを口走った私。
どう考えても地雷なのになんで?無意識?え?
混乱してきた。
自分ではない誰かの意思で喋られたのならわかる。だがこれは自分で判断した結果だと自覚している。自覚はしているが色々おかしい。その判断を下す過程が全くわからない。何を考えたのか…いや考えていなかったのか。
ともかくそういうことは後回しだ。今はこの状況をどうにかしなければならない。
私が改めて口を開こうとした時だった。
ーーゾッ…!
身体中に鳥肌が立ち体が芯の方まで冷えていく。少し遅れて状況を理解した頭が恐怖を感じ警告を出し続ける。
「……なんでその名を?」
見れば周りにいる天狗も尻餅をついていたり泡吹いてたりと尋常じゃない。
私はまだ鬼の本質的恐怖を知らないからこのくらいで済んでいるのだろう。知っていたら彼らより先に失神する自信がある。
「もう一度言う。どこでそれを知った?」
「あ…えっと…その…まあ…風の噂?」
萃香の手が一瞬視界内でブレた。周辺に一陣の風が吹き、そのとたん右の腕にヒリヒリとする痛みが走る。
「正直に言おうな?別に怒らねえから」
何も見えなかった。まさか動体視力が追いつかないなんて…鬼なめてた。
嫌な汗が頬を伝ってたれていく。
「あ…あの…えっと…」
もうどうしていいかわからない。正直に言う…はダメ。嘘をつく…も逆効果。
なら苦しい言い訳になってしまうが、仕方ない。
覚悟を決める。
「……その件は秘密ということで処理していただけませんかね」
なるべく対等に、それで持って威圧しない程度に言い放つ。
話のわかる鬼ならいいけど…これで決闘なんてなったら…まあいいやそのときはお酒を渡して逃げ……お酒無かった。
ま、まあその時はその時、勝ち目がなさそうだけど逃げるが勝ちだ。
さっきから顔を伏せて表情が分からない萃香に視線を戻す。
怒らせただろうか?周りの視線も逃げ出したい雰囲気が物凄く出ている。
「あはははっ‼︎面白いねえ。鬼に対して隠し事なんて」
怒ってるのかと思いきや急に大笑いし始めた。
あ、良かった。怒ってなかったみたい。
「えっと…まあ、色々ありまして」
「そうきたんじゃ早々話してくれなさそうだね…別にいっか!私のことを一発で当てるなんてねえ。普段は勇儀がよく間違われるんだなあこれが」
「確かに…知らないと間違われそうですね…あちらの方が大江山の鬼大将って感じがしますから」
「ん?なんだい?勇儀のことも知ってるのか?こりゃますます訳を聞きたくなったねえ……あんたみたいなのが大江近くにいたら絶対に私らのところに情報が来てるんだよ。それが無いってことは、どういうことかな」
あー…またやっちゃった。
「禁則事項です」
ってあれ?今思ったのですが、他の天狗さんはどこへ行ったのでしょうか。
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