ハーメルン
古明地さとりは覚り妖怪である
depth.9雪の日のさとりはどんよりするのか?

寒さも一回りすればあったかく感じるって思うけど実際はそうでもない。
寒いものは寒いし思い込みで無理に寒くないと暗示をしても今度は目の前を塞ぐ白い氷の結晶が邪魔をする。

「珍しく豪雪になりましたね」

(全くだよ…なんでこんな時に…)

まあ、秋があんなに寒かったのだからこうなるとは予想してましたけど…

妖怪の山を出て一ヶ月。
最初は結構順調に進んでいたのですが集落を一つほど超えたところで大雪に見舞われ全く身動きが取れなくなってしまった。

天候も悪化したままで飛ぼうにも飛べない。いや飛ぼうと思えば飛べるんですけど風に煽られたりなんだりであまりやりたくないのが本音です。地上を歩こうにも雪で行き足は落ちるわ…やっぱり春まで待ったほうがよかったでしょうか?
まあ今更遅い後悔なんですけどね。

(寒い…)
休憩してる私の横でお燐が丸まっている。
貴方より私の方がよっぽど寒さに晒されるんですけど…ねえ。

「寒いですね…火でも起こしてくださいよ」

(なんであたいがやるのさ?)

なんとなくですかね。私が起こしても良いんですけどお燐だってたまには手伝ってくださいよ。

「いいじゃないですか。折角火焔猫燐って名前になったのですから」

(それ関係ある⁉︎)
無いですよ。なんとなくです。

「なんとなく火を起こせそうじゃないですか。っていうか名前言いづらいですね。火燐でいいですか?」

(なんちゅう酷い略し方なんだ…)

冗談ですよ。言いづらいのは本当ですけど。

(って、さっきお燐って言ってたんだからそれでいいじゃん!)

まあそうなんですけどね。なんとなくあだ名はつけてみたくなるじゃないですか。ほら…

「で、火をつけてください」

(ごめん。まだそういう妖力の使い方とかまだ出来ないんだ)

「じゃあ今覚えましょう。大丈夫、痛くはしませんから」

(いやいやいや、だったらさとりが火を起こせばいいじゃん)


まあ、寒いからと現実逃避するのもこのくらいにしてと…


「これ以上天候が悪化すると嫌なので今のうちに行けるとこまで行きますよ」

雪に埋もれていたお燐を抱き上げ雪を払い落としてあげる。
寒そうに体を身震いしてお燐は服の中に潜る。一瞬肌に冷たい毛並みが触れる。
しばらく無言でもぞもぞと動いていたお燐だが、少しして頭を出して来た。
(いやあ…あったかいねえ)

ぬくぬくとあったまっているところ悪いですけど…ちょっと寒くしますね。
言葉にはしないがそういう念を込めて頭を撫でる。
それを察したのかお燐が再び服の中に潜る。毛並みが擦れてくすぐったいのですけど。

足の方に力を入れて飛び上がる。
そのまま身体を前に倒して飛行形態をとる。

冷たい風と雪が一気に降り注いでくる。これはまだいい方だ。ブリザードだったりもっと天候が悪化すれば飛ぶことすら困難になる。その時はどこかで暖を取らないといけない。

(うわわ!寒いってば!)

全く、お燐は寒さにとことん弱いんですから…

そうしてしばらく飛んでいくことにした。
まあたまに風に煽られて落ちたり進路がずれたりあっけど大したことではないので放っておく。

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