十六、花火の中で
八月の第一土曜日。
待ちに待った花火大会当日だ。
前々日から天気予報をチェックして雨天を心配していたのが馬鹿らしくなるくらい、今日の空は濃い青に晴れ渡っていた。
そんな昼間の殴りつけるような強烈な日差しの中、浦原商店にやって来たのは仮面の軍勢の拳西さんに白さん、リサさん、それからひよ里さんの四人だった。
――そう、ひよ里さん。ひよ里さんが来てくれたんだ。
まず間違いなく来ないだろうと思っていただけに驚いた。
良かった。これで、自然な流れで二つの目的を達成できる。
「この三人は私と同じ学校の……左から一護、竜貴、由衣ね。それから後ろにいるのが一護のお父さん」
原作メンバーである一護と竜貴がいるのは決定事項、そして由衣を誘ったのも相応の理由があった。
「こちら、ひよ里ちゃん。同い年で隣の県に住んでるんだ」
「ひよ里? 可愛い名前じゃん」
「よろしくな!」
「よろしくね」
「……よろしく」
この子達は皆人見知りもしないし、良い子ばかりだ。
口々に笑顔でよろしくと言った彼らに、いつものジャージ姿のひよ里さんは嫌そうに応えた。
「……あ。ついでに、この人が私の父さん」
「ついでって何スか……」
私とひよ里さんの保護者という名目で、喜助さんにもついてきてもらった。
一護はこれから嫌でも喜助さんに関わることになるんだから、会って打ち解けてもらうに越したことはないし……何よりひよ里さんの性格を把握している喜助さんがいてくれると心強いし。
ちなみに、一緒に来た他の三人は今ここにはいない。
拳西さんは一護達と合流する前に、屋台を見て食欲の化身と化した白さんに引きずられて行ってしまった。リサさんに至ってはそもそも花火大会ではなく、尸魂界の物資を秘密裏に仕入れる喜助さんの搬入経路が目的だったようだ。
「金のニオイ……今日こそは見つけ出してやるで!」と真顔で息巻いて商店内を探し回るリサさんは、夜一さんとは別のベクトルで怖い女性だった。
そして、残されたのはひよ里さんだった。
どうして来てくれたのか訊きたかったけれど、それに下手に触れて不機嫌になっても困る。そこでとりあえず、一護達と合流するにあたって予め作っておいた設定を説明しておくことにした。
一つ目、ひよ里さんは私と同じ小学四年生だという体にすること。二つ目に、『ひよ里さん』ではなく『ひよ里ちゃん』と呼ばせてもらうこと。
そして最後に、学校では喜助さんが私の父親役だから、私が喜助さんを『父さん』と呼んでも驚かないでほしいということ。
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