第017話 誰も幸せになれない
ハチマンは街に辿り着いた後、アスナに短く帰還の報告を入れた。
一層への転移門へ向かおうと歩き出したハチマンの視界に、
どうやら武器強化を依頼しているであろうプレイヤーの姿が映った。
(あれが噂の職人か。どれ、ちょっと見学でもするか)
目立たないようにベンチに腰を下ろし、ハチマンはその様子を見学する事にした。
(何であいつ、あんなに辛そうな顔してるんだ?
あれ、今何か不自然な動きをしたか?あと依頼した武器が何か……違和感がある)
その違和感が何かは分からなかった。
そして次の瞬間、澄んだ金属音と共に武器が砕け散った。
(は?なんだ?強化で武器破壊なんて聞いた事が無いぞ。一応アルゴに確認するか)
ハチマンはアルゴに詳細を書いたメッセージを送り、
とりあえずそのまま宿に戻り、休憩する事にした。
ハチマンはベッドに横たわり、先ほどの出来事について考えていた。
(何度もリズが武器を強化する所を見てきたが、それと比べると何かが違った。
だがそれが何かはわからない。一体どういう事なんだ)
そうやって考え事をしていたが、ふとメッセージが二通来ている事に気付いた。
一つはアスナからで、明日ハチマンの武器の強化素材を取りに行こうというものだった。
もう一つはアルゴからで、最近それ関係の情報を求められる事が多いので、
ハチマンからの情報も踏まえ、こちらでも詳しく調べてみるとの事だった。
その日は疲れていたのでアスナに返信だけして、ハチマンは眠りについた。
次の日ハチマンとアスナは、ハチマンの体術スキル取得のため滞っていた、
ハチマンの武器強化用の素材収集を一気に終わらせ、街へと戻ってきた。
どうやらハチマンがクエストを行っている間に、
リズベットの鍛治スキルの熟練度は、武器強化を頼むのに十分な数値に達したらしい。
「アスナの武器は、もうすぐにでも強化できるのか?」
「えっとね。後はハチ系のモンスターから低確率で落とす素材が必要なんだけど、
リズの武器の相性が、ハチとはちょっと悪くてね。
だから、ハチマン君が戻ってきたら一緒に行ってくればいいんじゃないかってリズが」
「なるほどな。それじゃ明日一気に終わらせるか」
「うん、お願いします」
二人が話していると、前方から背の高い人影が近づいてくるのが見えた。
「おっ、久しぶりだな二人とも」
「エギルさん!」
「久しぶりだな、エギル」
それは、ボス戦で交流を深めたエギルだった。
エギルは、攻略についての近況を話してくれた。
キバオウが、いずれギルドを作る事を前提にアインクラッド解放隊を作った事。
リンドというプレイヤーがディアベルの跡を継ぎ、対抗グループを作った事。
今日これからフィールドボスの偵察が行われる事。
「やっぱ、一から何もかも始めなくちゃいけなかった一層と比べて、攻略速度が上がったな」
「ああ。お前らも参加するか?」
「いや、その段階だと途中から出しゃばってるように見えるかもしれないし、
フィールドボスは遠慮するわ。階層ボス戦には参加するつもりだけどな」
「私もそれでいい」
「そうか。ここだけの話、正直俺もあいつらとはあまり気が合わないんでな、
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