ハーメルン
ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>
再筆版 四話:天上人、又の名をテロリスト

コーディネーターとして強化された聴覚が、背後の収音マイクが拾った足音を脳へ送る。
型は味方機だが、この認識番号は・・・

「MIA・・・はっ!ナチュラルの鹵獲機体ってか!操縦もできないくせに!」

崩れ落ちた新型を前にして、ミゲルのジンはゆっくりと向き直った。
何を思って背後にいきなり出てきたのかは知らないが、黄昏の魔弾の二つ名は伊達でないことを教えてやる必要がある。

「不意打ちの一つもできないとはたかが知れるなぁ!」

ジンは、通常スラスターで回避飛行を行いながら銃撃をかわし、モビルアーマーメビウスよりもはるかに射角の広い銃撃で敵機を沈めるのが基本戦術だ。だが、この敵機は立ち止まっている。満足に動かせもしない機体をここまで引っ張ってきた努力は認めないでもないが、今ここで無駄になる。
こちらがアサルトライフルを構えると、敵機と思しいジンは重斬刀を引き抜き、熱源反応から判断するにスラスターをチャージしている。

「ナチュラルがコーディネーターに勝てるかよ!」

ジンの装甲はアサルトライフルの数発には耐えるが、連続で当たれば衝撃や装甲強度の限界でコーディネーターでもダウンする。ダウンさせた後は、接射を行うなり鹵獲するなりすればいい。
その初撃の命中率こそが、黄昏の魔弾の由来だ。
相手が予想より少し早く動き始めた時点で、右手が正確にレバーを動かし偏差を修正。親指のトリガーをいつも通りレバーが微動だにしないように固定してから押し込む。
勝った!
発砲よりも先に、ミゲルの頭には蹂躙の暴力的快感が満たされつつあった。しかし、目の前の光景の異常に頭が急速に切り替わる。
今敵は、重斬刀の腹で誰もいない方向に銃弾を流した!いくらコーディネーターでも直接銃弾が目でとらえられるわけではないが、トリガーを押した直後の火花と無傷でこちらへ突進するジンがそれを証明していた。先ほどまでの勝利の予感は消え去り、背筋を濡らす冷たい汗が手を震えさせる。

「なんだよ・・・何者だよてめぇは!」


◇◇◇◇◇◇


発砲の意志は相手のパイロットから鮮烈に放たれていたため、狙いを発射前の数瞬に予想し射線を脳内から現実に仮想的に投影する。後は、発砲タイミングから予想される弾道の位置に重斬刀を、現在乗っている機体の反応速度を考慮しながら置いておくだけでいい。銃弾を逸らす方向は発射される弾丸の一つ一つに合わせて変えれば良い。
その程度の演算は、純粋種の力に加えELSと融合した刹那ならまだまだ余裕がある。

無事に弾丸が人間が存在しない方向に流れたことを確認し、歩いて突進していた機体をスラスター出力で一気に押し込む。狙いはコクピットではない。重斬刀を構えてチャージし、コクピット狙いだと判断したのだろうか。相手はAMBACで腕を振り子にし、本体を重斬刀が刺さらない方向へ持っていこうとするが、狙いはその右手に持っているアサルトライフルだ。
これ以上周囲に被害を出すわけにもいかないため、アサルトライフルの銃身を突進の威力で砕き、停止のために踏ん張った左足を軸に残った勢いを乗せた右足で足払いをかける。急な回避で崩れていた姿勢は、体重の乗った回し蹴りで勢いよく倒れた。一般の人間ならここで気絶するはずなのだが、相手はアレルヤのように遺伝子調整で身体強化されている。
はたして、コクピットがゆっくり開いたと思えば勢いよく中からパイロットが飛び出し、小型のブースターで離脱していった。これは、おそらく証拠隠滅用の自爆だと当たりをつけ、急いで後退しながらキラたちの乗る新型へオープンチャンネルで連絡を入れる。

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