01:三国連合/一年越しの願い②
02-5/一年越しの“願い”2
で…………
「なんか増えてる……」
目覚めれば、赤い髪の女の子が俺の腕を枕にして寝ておりました。
あの……確かこの娘、呂布……だよな?
「…………」
ずず……と腕を引こうとすると、無意識なのだろうか……制服をぎゅっと握り、逃がしてくれない。
ええ、と。これはどうしたら……。
そんなことを考えていると、彼女の目がぱちりと開かれる。
「………」
「…………」
気まずい。
なにが気まずいって、大して面識もない相手に腕枕して、目が覚めたらあなたが居ましたって状況が気まずい。
ほら、あれだ。女性が寝てたらいつの間にか見知らぬ男が隣で寝ていましたって状況?
いや……相手にしてみたらって意味で。
けれど呂布は、かふ……と小さなあくびをすると、ごしごしと俺の腕に顔をこすりつけるようにして再び目を閉じる。
「いやいやいやいや……!」
「…………?」
目を閉じる呂布を言葉で止める。お願いだから二度寝は勘弁してくださいと。
いや、はい、俺もしました二度寝。人のことを強くは言えません。だから優しく言います。
「あーの、りょ、呂布さんで……あらせられるよね?」
「……あらせられる」
言って、微妙に傾げ気味に頷く彼女は、またも顔をこしこしと腕にこすりつける。
……いい匂いでもするんだろうか、くんくんと鼻を動かしている。クリーニングには出してたけど……そんなにいい匂いするだろうか。
って、だからそうじゃなくて。
「どうしてここで寝てるんでしょうか……」
「…………セキト」
……セキト? と、目の前の少女のように首を傾げるとその腕の中で“わふっ”と鳴く犬のことを思い出す。
この犬がもしかして、だろうか。……だからといって、寝てる理由と繋がるかといったらそうでもない気がするんだが。
「えっと……この犬がここで寝てたから、キミも?」
「………」
普通に頷かれた。警戒心というものを知らないのだろうか。仮にもそう面識のない男の腕を枕に、とか……。
「…………ああ」
なるほど、俺がなにかすれば、三国無双によって俺はミンチになるわけだ。そりゃあ恐れることはないよなぁ。……と、そこまで考えてみて泣きたくなった。
一年やそこら修行したところで、この世界の女の子たちには敵わないんだよなぁ。うう、頑張れ、男の子……。
「でもそれとこれとは話が別で……えぇと、呂布?」
「………………恋でいい」
「え?」
「…………恋」
「……れ、ん…………って、もしかして真名のこと? い、いやでもそれは───」
「………」
「うっ……」
無表情だけど、どこか期待を含んだような目が俺をじぃっと見つめてくる。
女性が自分の腕を枕に寝て、その無垢な目が期待に揺れて……そんなものを断れる男を、少なくとも俺は知らない。
断る男が居るのなら、それは紳士というものだ。
もちろん時と場所を弁える意味でなら、俺だって踏みとどまれるさ。多分、きっと。
だからこそ断ろうとした、と思いたい。
なのにお犬様が続きを促すように、じいっと見つめてくる上、呂布も俺をじーっと見てくるわけで。
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