02:三国連合/ただいまを言える場所③
07/ただいまを言える場所
「そんなわけで───すいませんでしたっ!」
「許さん」
「えぇえっ!!?」
「ちょ、愛紗ちゃんっ! こ、こっちこそごめんなさい御遣いのお兄さん、私もなんか大事にしちゃったみたいで」
ええ大事でしたとも。
あんな帰り方じゃなかったら、きっと全てが感動的に纏まっていたんだと思えるくらいさ。
でもこうして劉備も許してくれたようだし、あとの問題は───
「あ、あー……」
ちらりと見た先に居る、殺気ともとれる威圧感を以って、力を溜めて待機している魏のみんな……だろうなぁ。むしろなんで動かないのか───と考えてみて、答えはすぐに確信に到る。華琳に“待て”を命じられているんだろう。
あれらが解放された時、自分がどうなるかを考えるとちょっと怖いような───……って、あれ?
(…………凪?)
ふと気づく。
一瞬俺と目が合った凪が、申し訳ないような、合わせる顔がないような感じに目を逸らした。
どうしたんだろ…………って、凪の性格を考えると、ほぼ間違いなく俺に攻撃を仕掛けたこと……だよな。
べつに気にしてないのに。
「……うん、よし」
だったら、そんな憂いも吹き飛ぶくらいに笑顔で“帰ろう”。
この世界が俺が居たかった世界で、帰るべき場所が魏の旗の下なんだ。
言わなきゃ届かない思いがあることを、さっき華琳に拳と一緒に叩きこまれたばっかりだしな。
「みんな! ただい───」
「全軍、突撃!」
「───ま?」
華琳様が小さく仰いなすった。
途端、お預けをくらっていた猛獣達が檻から解き放たれたかのごとく地を蹴り───
「北郷ぉおおおおおっ!! 貴様っ! 斬るぅうううううっ!!!」
「一刀ーっ!! 一刀やぁあーっ!!」
その筆頭を競わんとする二人は、片方はともかくもう片方は大剣を手にそれこそ突撃してきて……ってキャーッ!?
「せぃいっ!」
「ヒィイッ!? ちょ、春蘭!? いぃいいいきなり斬りかかるやつがあるかぁあっ!! 前髪にかすったぞ!? 少し落ち着」
落ち着いてくれ、と言おうとした途端、左の頬に春蘭のビンタが炸裂した。
それはよくある右から左へ~、なんてものではなく、ならばチョッピングライトにも似た斜め上から袈裟掛けに、というわけでもなく。むしろ空へ吹き飛べとばかりの、ボクシングでいうスマッシュにも似た鋭くかちあげるようなアッパービンタだった。
───結果、叫びながら中庭の空を飛んだ。
女性のビンタで空を飛ぶ……それはきっと、盗んだバイクで走り出すより凄まじいことだと思いました。
皆様に愛されて約一年、北郷一刀です。
「貴様ぁああああ…………!! よくも我らの前にのこのこと姿を現せたものだな!! それは褒めてやる!!」
「褒めるの!?」
倒れ、しかし顔だけ起こした視線の先には赤き隻眼の鬼神。
言った途端に武器を納めてくれたことだけは感謝したい気分だが、空を飛んで地面に落下、無様にうずくまった俺は、それを素直に喜んでいいのだろうか。
いや、そりゃあ春蘭のビンタなんて珍しすぎて奇跡体験かもしれないが、うん。痛いものは痛いです。
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