白い少年にお祈りを
「ベート!右だ!右から3匹っ!」
「ちっ!おらぁ!死ねやクソ雑魚がぁっ!!」
ベートのスラリと伸びる蹴りにより、四方八方から襲いかかってくるモンスター達を殲滅していく。
モンスターは仲間がいくら殺されようと、構わずに無心で突撃してきた。
知能の無い生き物程滅びるとは聞くが、本当にその通りだ。
俺は後ろからベートに指示を出しつつ、混沌としたダンジョンでの戦闘に終わりが近づいてきたことを察する。
数が減ったな…。
もう少し狩れば全滅するだろう。
「よし!ベートその調子だっ!左も右も前も後ろも全部殺せぇぇ!ひゃーっはっはっはっ!!あの時の恨みじゃ雑魚共が!!」
「…お、おい、カズマ」
ベートは器用にも、蹴りを繰り出しつつ背後の俺に話しかける。
背後と言うか、背中におんぶしてもらってるんだけどね。
「おまえ、浅層のモンスターくらい自分で戦えよ…」
「バッカおまえ。コボルトを舐めるなよ?1対1ならともかく、あいつらは集団で襲いかかる卑怯なモンスターだ」
「そ、そうだけどよ…」
「おいおい油断すんなよ!?高品質なアダマンタイトの代わりに俺のストレス発散に付き合ってくれるって言ったのはおまえだぞ!!」
俺がそう言うと、ベートは呆れたように溜息を吐きつつもコボルトの群れを一掃した。
3層のコボルトはベートが居れば敵じゃない。
ちなみに、この状況には理由がある。
それは昨夜の事。ベートが打撃特化型の硬質ブーツを作りたいとのことだったので、俺は深層で採取したアダマンタイトを渡してやったのだ。
最近じゃ金に困ることもなく、採取だけして採取してフレイヤん家の倉庫に眠らせていたアダマンタイトだったので、俺には何のデメリットも無い。
ただ、無償で渡してやるほどの善人でも無い。
なので俺はストレスの発散に、ベートへコボルトの全滅を頼んだのだ。
新技も試したかったからいいぜ。
と、快く受け入れたベートとバベル前で待ち合わせをし、俺はよいしょと背中に乗ったのだった。
「ふぅ。これで全滅させたな」
「おう。それでどうするんだ?もっと下へ進むか?」
「ん〜。深層に用事もないしなあ…」
「なんだよ。俺はもっと歯応えのあるモンスターと戦いてえんだ」
歯応えならミノタウルスの唐揚げが美味しいよ?
なんて冗談を言いつつ、俺はベートに、おんぶしてくれるなら何処まででも付き合ってやると伝える。
とは言え、あんまり長いことダンジョンで油を売る気も無いが…。
「深層まで行かねえか?カズマは道案内をしてりゃいいし」
「あ?嫌だよ。日帰りできないじゃん」
「俺の脚なら日帰り出来る」
面倒だなぁ、と思いながらもベートは既に歩き始めている。
背中に乗った俺は電車に揺られる女子高生の如く、その行き先に到着する事をただただ待つのみだ。
ティオネやアイズの背中にも乗った事があるが、ベートの背中は程よく広くて乗り心地が良い。
なんどか髪から良い香りもするし…。
…やだ俺ったら、男の背中に胸キュンしちゃってるじゃん。
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