ハーメルン
ある鎮守府のエンゲル係数
那珂と川内流とんこつラーメン


キラキラとやる気を出している駆逐艦娘たちの手前、那珂も嫌だとは言えなかった。





出てきたラーメンからは、強烈な豚骨の匂いがした。

ごってりと脂が浮かんだ、乳白色のスープ。
具材は、三枚のチャーシューときくらげ、青ねぎだけとシンプル。
すり胡麻が少々振られていた。

高菜のたっぷりのったライスと、三個の餃子、搾菜がセットに付いている。

すでに持ち手にまで脂が付着しているレンゲで、まずはラーメンのスープを一口。

漂う豚骨の匂いの割には、スープには豚特有の臭みがほとんどなく、まろやかで上品な味わいに仕上がっている。

箸でスープの中から麺を引き上げる。
コシのある、極細で硬めに茹でられた少量のストレート麺。

小麦の風味は強いが、スルスルと食べられてしまい、物足りなさも感じる。

敷波と綾波がラーメンを運んできた際に置いていった、川内直筆らしい『麺の替え玉、お申し付け下さい』という短冊が示すように、替え玉を前提として、麺が汁と絡まることよりも吸い込みの良さと舌触りを重視しているらしい。

チャーシューは箸で簡単に崩せるほどトロトロに煮込まれていて、これがまた次の麺のすすりを早くする。

「こっち、替え玉7つお願いします」

周りの駆逐艦娘たちも麺が無くなりかけているのを感じ、那珂はキャラ作りも忘れて、低い声で注文をした。

「ハイハーイ、ありがとうございます!」

それを聞きつけ、川内自らドヤ顔で替え玉を給仕に来る。

「川内ちゃん、スープにトビウオの煮干し使ってる?」

那珂は小声で川内に聞いた。

「あははっ、那珂には敵わないなぁ。ほんのちょっと、隠し味にしか使わなかったのに」

川内が苦笑する。

「博多風とんこつに徹するなら邪道だけど、あたしの名前の元になってる川内川が流れる鹿児島県は、トビウオの漁獲量日本一だからね」

それを聞きながら、那珂はアイドルではなく料理職人の顔つきになり、明後日の四水戦による昼食当番のメニューを真剣に考え始めていた。

[9]前 [1]次話 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/2

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析