大井と牛にんにくの焼きめし
「春も、もうすぐなのかなあ」
出撃していた艦娘を待つ埠頭で、提督が小さくつぶやいた。
この鎮守府も、大規模作戦としてウルシー環礁に発見された敵大規模泊地への攻撃を行っていた。
そして、そのほとんどの攻撃を跳ね返されて資源も尽き、攻略をあきらめかけていた最後の出撃によって……。
ようやく、「深海双子棲姫」を撃沈した。
この鎮守府では、他の有力な鎮守府が敵撃破に成功した後に、完全復活していない状態を狙って攻撃する「乙作戦」での作戦遂行だったが、ともかく一応の作戦成功となった。
まず、最初に鎮守府に帰還したのは、支援艦隊の艦娘たち。
超長距離から、見事な支援砲撃を決めた、大和、武蔵、イタリア、ローマ、夕立、時雨だ。
「提督が改修してくださった46cm三連装砲、とても照準しやすかったです」
「この試製51cm連装砲、よくここまで改修したな。当たるとは思わなかったぞ」
「アメリカの砲はすごいわね。初めて支援で直撃できました」
「このドイツのレーダー……もらっちゃダメかしら?」
犬のようにまとわりつく、観測用レーダーを満載した駆逐艦娘2人をあやしながら、提督は戦艦娘たちに慰労の言葉をかける。
次に、連合艦隊の第一艦隊が帰還する。
金剛、榛名、アイオワ、ビスマルク、千歳、千代田。
「うー……日頃の無理がたたったみたいデース……」
「被弾してしまいました……申し訳ありません」
「oh shit! うぅ…」
「私が一番ですって? 何言ってるの、あたりまえじゃない!」
(一隻を除いて)満身創痍の戦艦群。
それに続いて、盛大に被弾してほぼ半裸状態にまで艤装が引き千切れた、千歳と千代田が埠頭に上がってくる。
「飛行甲板、やられちゃいました」
「痛たたたたぁ……後で、提督の膝枕を差し出すのよ!」
「ともかく、金剛と千代田は即入渠! バケツを使って、次はビスマルクと千歳!」
提督があわてて修復の指示を出す。
「ほいさっさー!」
埠頭で待機していた漣が、手押し台車の上にバケツ型の容器に入った高速修復材をのせ、お風呂場へと運んでいく。
さらに帰還したのは、連合艦隊の第二艦隊。
「阿武隈、ご期待に応えました!」
「やったなぁ!」
「雪風、また生還しました! 司令のおかげですねっ」
「や~りま~した~」
阿武隈、摩耶、雪風、綾波だ。
ほとんど無傷な4人に安心し、提督は上着を千歳に被せようとするが……。
「まあ風呂もいいよね~。ね、大井っち?」
「そうですね、北上さん♪ 提督、人が激戦から帰って来たのに、千歳さんと何イチャイチャしてるんですか? 魚雷、撃ちますよ。いいですね?」
千歳、千代田に負けず劣らずの半裸状態にまで被弾しているハイパーズ。
「あ、北上、お疲れ……わ、待って、大井、これは違うよ?」
そして、千歳に上着をかける提督の手を、微笑みながら大井がねじ上げた。
ボロボロになり、かろうじて自分の手で押さえていた大井のスカートが、提督に手を出したことで風に舞う。
「痛い、痛いし、大井! スカート落ちてる! 見えてるから、千歳よりマズイことになってるから手で隠しなさい!」
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