ハーメルン
ある鎮守府のエンゲル係数
【番外編】鎮守府の祝勝会(2017冬)

底冷えこそするが、昨日も気温は零度を下回らなかった。
山中や日陰にはまだ白いものが残っているが、漁港付近の雪はすっかり熔けだしてきている。

この鎮守府は先の大規模作戦で備蓄資源を使い果たし、軍事施設としては開店休業に陥っていた。
それでも、祝勝会とひな祭りの準備で、鎮守府の中は朝から割とあわただしい。


「ビールの追加注文は50ケースでいいかな?」
「瓶ビールは30ケースでいいから、お昼のバーベキュー用に缶ビールを30箱」
「ヴァイツェンやシュバルツも注文してよね」

特に酒飲みどもの活気たるや凄まじい。

「ひな祭りもあるんだから、肝心の白酒(しろざけ)の注文を忘れないでよね」

瑞鳳が注意するが、のん兵衛たちはあまり聞く耳を持っていない。

「今回は、陸奥八仙、南部美人、雪の茅舎、高清水、手取川をそろえてみようか」
「何や北の酒ばっかやなぁ。七ツ梅とか亀泉も入れようや」
「霧島の赤黒と佐藤、あと兼八は外せないよな」
「ストリチヤナのウォッカと、ワイルドターキー、あとカンパリもお願い」

あれやこれやと日本酒や焼酎、洋酒の銘柄選びに真剣になっている。

「ポーラ! ワインの注文数30を80に書き換えたの、あなたでしょ!」
「ザラ姉さま、それは……あ、あの~。あの~……。」


料理の準備も各所ですすんでいる。

「那珂ちゃん、アンコウが届いたからさばくのお願い」
「神通ちゃん、それアイドルの特技として相応しくないから大きな声で言わないで」

「海老の下処理をするから、七駆は集まってくださーい」
「暁ちゃん、第六駆逐隊はホタテの殻むきをお願いします。はい、殻むきヘラ」
「任せて、ホタテむきは得意なんだから!」
「ヒモと赤いところは集めておいて、鳳翔さんのところに運んでね」


一方、堤防では釣り部隊が組織されていた。

「第十七駆逐隊、堤防釣りに出撃するぞ!」
「五水戦、出るわよ! みんな準備はいい? 松風、釣れなかったら、後で笑ったげるわ!!」
「今日はヒラメがきてるニャ。あの辺を狙って投げ入れるニャ」


また、昼のバーベキューパーティーの準備を始める海外艦娘たちもいる。

「アイオワさん、試製一六式野外焼架台改(バーベキューグリル)の設置、手伝って」
「オフコース! No BBQ,No Life」

「ビスマルク姉さん、一三式自走炊具のバーナーの燃料が切れてますって」
「ふふん、灯油ポンプの使い方を教えてあげるわ」





夕張が製作した試製一六式野外焼架台は、1メートル×50センチのバカでかい焼き台を2つ備え、片方の焼き台は中の溶岩石を過熱し遠赤外線で肉を焼き上げ、もう片方は6基のガスバーナーで高火力を発揮でき、六分割されているフードを閉めれば個別に蒸し焼きも可能、さらに煮炊き用コンロ2基と、調理台に配膳テーブルまで引き出し可能に装備している、変身ロボのようなギミックに満ちた高性能バーベキューグリルだ。

当初、火加減の調節が難しく、火の通りやすいものがすぐ焦げるという欠点があったが、ガス量を五段階に調節できる調整レバーと、焼き台から距離をとれる低温用の網棚が追加されて、“改”仕様となった。

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