ハーメルン
ある鎮守府のエンゲル係数
【番外編】バーベキューと秋月

鎮守府の祝勝会の第一弾、昼のバーベキューパーティー。

試製一六式野外焼架台改を駆使し、ノリノリで肉を焼くアイオワ。
ただ、そのバーベキューは、日本人が考えるそれよりも、はるかに豪快だった。

牛の肩ロース肉の塊に、岩塩とスパイスを塗り込み、そのまま一枚肉として焼く。

(アドミラルの料理は繊細だけど、シャイすぎるわ。ホァイ、肉を細かく刻むの?)

アイオワの知るバーベキューとは、ビッグでグレートでワンダフルなものだ。

巨大な一枚肉に焼き目をつけたら、水で薄めたバーボンを少量振りかけ、グリルの蓋を閉める。

(オーケー、これで3ミニッツ)





3分後、アイオワは蒸し焼きにされた、デカ肉をグリルから取り出す。

「うわっ、スゲッ」
「超弩級の肉だよ、あれ」
「ろーちゃん、食べたいですって。がるるー」

周囲の歓声に気を良くし、巨大な肉にナイフ(テーブルナイフではない、人間に刺したら一発で〇せるようなマジなナイフ)を入れる。

巨大な肉の内側から、ホクホクとした煙とともに、素晴らしい香りが立ち昇り、ジューシーな肉汁がこぼれ出す。

(Yes! This is the real BBQ!!)

切り分けた肉(それでも日本のステーキ並)を、周囲の艦娘の皿にトングでのせるアイオワ。

「アキヅゥキ! ハイ、ビーフね!」

アイオワから、切り分けた牛肉を給仕された秋月は……。

「あ、ありがとうございますっ! 妹たちと、大事に食べます!」

それを聞いたアイオワは、こう判断した。

(Oh,No! シスターズとシェアして食べるには、これじゃ足りませんね)

そして、秋月の皿の上に、さらに二枚の巨大な肉がのせられる。





「で、でいどく……どうじたら……」

対処しきれない幸福に、脳がショートした秋月が、涙声で提督に駆け寄る。

「あ、あぁ……うん……」

何となく事情を察した提督は、優しく秋月の頭を撫でる。

「ほら、こうしてごらん」

提督が、普通のテーブルナイフで、キコキコと肉を一口大に切り分けてあげる。

秋月の涙目が次第に収まり、顔に食欲の色が浮かんでくる。

「ね、照月と初月と、それでも食べ切れなかったら、他の子たちと食べなさい」
「ありがとうございます! 司令官!」

何度もペコペコと頭を下げながら、秋月が妹たちを探しに行く。

(うん、幸せだな)
満足げに缶ビールに口をつけた提督だが……。

「ちょっと、そこ! 止まりなさい」

ワインの瓶をラッパ飲みしながら歩く、パスタの国の重巡に声をかけるのだった。

[9]前話 [1]後書き 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/1

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析