ハーメルン
ある鎮守府のエンゲル係数
睦月型と深川めし

「司令官、如月サメさんに両足食べられちゃったわぁ」

ゲームで盛り上がる艦娘たちを優しく見守りながら、提督はパットに塩水をはり、あさりの塩抜きをする。

「弥生ちゃん、食べられるにゃしぃ!」
「あたしの腕が……怒ってなんか…ない、けど」
「うーちゃんもヤバくなってきた気配ぴょん」
「司令官も如月の足、タ・ベ・ル?」

「そのゲームは、最後の2人になった時に、先頭にいる人が勝利だからね」

提督があさりの入ったバットに新聞紙をかぶせながら、チラチラとスカートをめくって誘惑してくる如月を華麗にスルーし、ゲームのヒントを伝える。

「弥生、卯月のヤバイはブラフだよっ」
「そう……ね、卯月はまだ1のカード使ってない」
「司令官、助言はズルぴょん。ぷっぷくぷー」
「司令官たら、照れちゃってカワイイ」

そこに、ガラガラッと玄関が開く音がし、ドヤドヤと大勢の駆逐艦たちが上がりこんできた。

近海の警備任務に出ていた、皐月、水無月、望月。
防空射撃演習に出ていた、文月、長月、菊月、三日月だ。

「みんな、お疲れ様」
「ふわっ、わっ、わぁ~!? く、くすぐったいよぉ~っ」
「しれーかん、えへへ」
「うぅっ……なんなのさ、一体……」

提督は帰ってきた皐月たちに抱きつかれながら、彼女達の頭を撫で回す。

大規模作戦の消費で備蓄資源がなくなり、開店休業中のこの鎮守府だが、ある程度は活動しているアリバイを作っておかないと、補給物資が減らされてしまう。

そこで、消費の軽い睦月型の駆逐艦娘を使っての、最低限の遠征任務をこなしているという、本部へのアピールなのだ。

あとは夜に「夜戦!夜戦!!」とうるさい軽巡を放り出して出撃1回の報告書をあげる。

『長良型主催 お昼の第一倉庫バトミントン大会 毎日開催・賞品アリ』なんて張り紙が消えるぐらいに補給で倉庫が埋まるまでは、この手で回復を待つのが、提督の方針だ。


しかし、小さな駆逐艦娘とはいえ11人もやってくると、12畳の部屋でさえ一気に狭く感じる。

「まぁ、とりあえず、寝よっかぁ?」
望月など、勝手に押し入れから布団を出しているし。

駆逐艦たちは提督の部屋に気軽に遊びに来るが、中でも睦月型は日ごろから遠征でフル活用されている分、特に遠慮がない。

「うーちゃんのカードに狙ってかぶせてきてるしー!」
「1を出さない限り、最後尾でサメのエサにゃしぃ」
「うふふふふ(このまま2番手キープしてたら勝てそうね)」
「……(そろそろ、如月を潰さないと……)」

「ふみちゃん、バトルラインやりましょう!」
「え~、あれは考えるの大変だから嫌だなぁ」
「ならば、この長月が相手しよう」

三日月と長月は別のカードゲームを始める。

「うっ、急に眠くなってきたかも」
「菊月、入ってくんなよぉ~」

菊月が、望月の敷いた提督の布団にもぐり込む。

「さっちん、提督んとこのお風呂入ろっ」
「司令官、一緒に入ろうよ! ボクが背中流してあげる♪」
「あん、それなら如月も入りたいわぁ」

皐月と水無月も、勝手に浴室を使い始める。

睦月型に完全に乗っ取られた室内は放っておいて、提督は昼食の準備を続ける。

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