那珂と牡蠣の味噌鍋
「最初からトマトはハードル高過ぎるって。ボクたちもトマトは一回失敗してるんだ」
「ネ、ネギだって初心者向けじゃないんですよ?」
「那珂ちゃんたら、ミヤ爺にもネギは土寄せが大変だから、最初はニラにしておけばいいって言われたのに聞かなかったんですよ」
「神通がそれ言う? イチゴのハウス栽培は大変だって言われてるのに、まったく聞く耳持たなかったじゃん」
「ニラは簡単だぞ。一昨年、毎日のようにニラ料理が続いたのは、この武蔵のおかげだ」
「あたし的には、あれは作りすぎじゃないかなって……」
「夕張ちゃんのきゅうりも一年目は全滅だったけど、次の年はうまくいったし。とにかく、やってみる姿勢は素敵だと思うわ」
「能代ちゃん、ありがとう。大丈夫、アイドルは絶対へこたれないんだから」
那珂は牡蠣の味噌鍋に入っていた、長ネギをかじった。
味噌が染み込み、熱されて甘味の増したネギの風味。
これを自分で作ったのなら、さらに美味しく感じるのだろうか……。
(よーし、那珂ちゃん燃えてきたぞ!)
後日、パパラッチ青葉が農作業する那珂の姿を写し、それが「青葉タイムズ」どころか地元新聞に掲載されることになり、さらには那珂のアイドル人生の一大転回点になるとは、この時の那珂はまだ知らない。
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