不知火と鶏がら飯
神通たちの試作品では動物性ダシが負けて魚臭さばかり目立ってしまうので、神通が目指す煮干しの芳醇さに負けない、旨味が非常に強い鶏がらスープを作ってあげたのだ。
「しかし、手間がかかるものを、あえて選んだね」
「川内姉さんの“濃厚とんこつラーメン”や、那珂ちゃんの“嵐巻き起こすナカチャンポン”に、麺勝負で引けをとりたくなかったので……」
「ああ、那珂の牡蠣チゲとチャンジャの入った韓国風チャンポンは美味しかったね」
「私には、那珂ちゃんのような、みんなを明るくできる才能はありませんから……せめて味だけは妥協なく同じ水準で戦いたいんです」
(あれ、遠まわしに妹のこと芸人扱いしてる……?)
それはともかく、立ち居振る舞いは大人しいのに、神通は何事にも強い闘志を秘めている。
前に提督が「ボーナンザ決闘(BOHNANZA DAS DUELL)」というドイツのカードゲームで神通と遊んであげたら、勝つまで放してくれなかったし。
「うん、精一杯美味しいラーメンを作ってきてね」
メニュー当番は料理勝負ではないが、全力で切磋琢磨するのもいいことだ。
「はい。神通、参ります!」
スープの入った寸胴鍋を抱えて、神通は帰っていった。
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「不知火は、二水戦のラーメンの手伝い……は?」
不知火が風呂場から出てきた気配を感じ、振り返って声をかけようとして提督が止まる。
そこには、てっきりエンジ色の体操ジャージにでも着替えていると思った不知火が……。
雪風の服を着て立っていた。
「ッ……し、不知火に落ちゅ度でも?」
言いつつ、不知火の顔面は真っ赤に染まっている。
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