曙と釣り船料理
水面下に白い魚影が見え、さらにリールを巻き上げると、フッと重みが消え……。
ボンッと海面に浮き上がる、1メートル近い巨大なマダラ。
これぞ大物釣りの醍醐味。
「やったね、曙」
「どうよ、クソ提督っ♪」
提督がギャフで曙の釣ったマダラを引き上げる。
鋭い歯に気をつけて針を外したら、すぐさまエラにナイフを入れ、血抜きをして〆る。
そして海水氷を張ったイケスに入れれば、網漁で捕れて放置されたようなものより、ぐっと鮮度良く味が保たれる。
この日、昼近くに雲がかかり天候が傾いてくるまでポイントを変えながら数投した結果、大型のマダラが12尾と、中型マダラが10尾釣れた。
外道では、メバル類が48尾と、アイナメが17尾、カサゴが3尾。
釣り上げた総数では磯風がトップだったが、最大のマダラは曙が最初に上げた92Cmのものだった。
料理を始めたら途端に元気になった提督が、メバル類を簡単にさばいて煮つけを作ると、船上に良い匂いが広がった。
あっさりとしながらも、うっすら甘味がのったメバル類の白身に、はっきりした味付けの甘辛い汁がよく絡む。
釣りたてで身がぷりぷりのカサゴは、薄造りの刺身にしてポン酢でいただく。
あとはビンに入れて持参した、ふきのとうの味噌和えだけで、業務用2升炊きの炊飯器で炊いた米が、きれいに無くなってしまった。
海原の上で食べる陸の恵みも贅沢だ。
提督が食器などの後始末をしていると、そっと横に曙がやって来た。
「あの……それ、半分やるから貸しなさいよ」
「ありがとう、曙」
「……べ、別に構わないし」
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暁のオモリが根掛かりし、どうしても取れずに切断したり。
浦風と谷風が互いの糸をからませて、俗にいう「おまつり」になったり。
色んなトラブルもあった。
釣れたマダラは、クセがなく、あっさりとした味わいが特徴。
夜は冷えそうだから、玉ねぎとジャガイモと合わせて、グラタンの具にするのが良さそうだ。
鳳翔さんの居酒屋では、白子ポン酢が出せるだろう。
今日の釣りについて、帰った後の夕食について……。
にぎやかな談笑を乗せながら、「ぷかぷか丸」は母港を目指していった。
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