大鳳と肉まん
たゆん、と白い美乳が重力に解放される直前、大鳳は間一髪で自分の袢纏をポーラにかぶせるのに成功した。
そのまま押さえつけ、騒ぎを聞きつけ飛んできたザラに引き渡す。
「何だかドッと疲れました」
大鳳にとっては、精神的にもかなり「持ってかれた」気がする。
「でも、ひらめいた」
ふと見れば、提督が手を開け閉めし、宙をモミモミしている。
(乳!? やっぱり乳なの!? そんなに脂肪の塊が揉みたい!?)
般若のような顔になりかけた大鳳に、提督がにっこり笑いかける。
「夜食は中華まんにしよう」
「え、ええ……?」
冬場、提督は料理のできない艦娘でも蒸すだけですぐに食べられるようにと、皮も餡も自作した大量の様々な中華まんを、急速冷凍して冷凍庫にストックしている。
「中華まんを蒸すけど、欲しい子はいるかーい?」
提督の言葉に、辺り中から大反響があったのは、言うまでもない。
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「はい、どうぞ。これは五目肉まんだよ」
提督が差し出した大皿から、大鳳は一つの中華まんに手を伸ばした。
手の平に余るほどの、大きめの五目肉の中華まん。
大きさと熱さに戸惑いつつ、両手でしっかり押さえて、口に運ぶ。
二段発酵させた、もっちりふわふわした皮をかじると、ジュワッと溢れ出す肉汁。
熟成した銘柄豚を使用し、バラ肉は大きめに角切りに刻み、肩ロースは細かくミンチにした、二種類の肉の濃厚な味わい。
豊かな滋味と深い旨味を加えるホタテ貝柱、風味と歯触りの幅を広げるキャベツ、玉ねぎ、椎茸、たけのこ、といった具材。
そこに、醤油ベースに生姜の香りを加えた、特製ダレの旨味が足される。
「やっぱりこれ、寒い夜には最高だよねえ」
様々な味の中華まんにかぶりつき、とっかえっこをしている笑顔の艦娘たちを見ながら、提督が嬉しそうに笑う。
大鳳は胸のあたりに、キュンという小さな痛みを感じた。
(グラーフやポーラほどじゃなくても、せめてこれくらいあったら提督も喜んで……)
肉まんのふくらみを真似て、自分の胸に手で架空のふくらみを描いてみる。
(いや、何やってんの、私?)
あわてて手をしまい、提督に気付かれなかったのを確認して安心する。
「大鳳、方針は決めたよ。やっぱり駆逐艦の子達に無理はさせたくない。空母主体の機動部隊編成で、出撃回数で押していこうかと思う」
じゃれつく朝霜と清霜をあやしつつ、提督が静かながらハッキリと決意を込めて言う。
「はい! 大鳳の機動部隊、全力で参ります!」
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