ハーメルン
東方大魔王伝 -mythology of the sun-
第10話 枕戈待旦
月の都
今や魔物の巣窟と化したその場所
「……」
それを離れた所から見つめる二羽の鴉が居た
(平行といえど流石はバーンの率いる魔王軍と言うべきかしら)
紫の放った式である
第二次月面戦争でも使用した前鬼と後鬼と呼ばれる鴉の式を用いて月の都の偵察が行われていたのだ
(無防備に見えるけどその実抜け目なく探知結界が張り巡らされている……何か建設中みたいだけどその作業員すら警戒を怠っていない、これ以上は進めないし潜入も無理……か……)
式から見る紫の目からして完璧と思わせる潜入対策、都はおろか都の中央で浮かぶパレスももう潜入不可能だと思わせる程に徹底されていた
(問題はここをどうしたいのか……ね、攻めたのは純狐の存在からだと推測出来る、けれど他に理由が有ったのだとすればあの建設中の物が鍵……簡単に考えれば幻想郷を攻める為の土台……前線基地と言ったところかしらね)
思考する紫
ザンッ……
その時、突然に前鬼の映像が途絶えた
「はいスト~ップ!」
途絶えていない後鬼で確認すると前鬼は鎌の刃によって貫かれていた
「覗き見はいけないねぇ」
側に立つ死神、キルが仮面に隠された顔で笑っていた
(チッ……)
紫は内心舌打ちする
(空間使いキル……迂闊……これが更に広く警戒していたなんて……これ以上は進めないから合流したのが裏目に出た……逃げれない)
前鬼を細切れに変えたキルは後鬼に鎌を向ける
「いけない子にはお仕置きしなくちゃね……バイバーイ♪」
振るった鎌に首を切り落とされた
「大人しく待ってれば良いのに空気の読めない奴だよねホント……絶対自分賢いですって勘違いしたオバサンに違いないね」
細切れにしようと鎌を構えたキルだったが切り落とした首が動いたのを見て腕を止めた
「一つ聞かせて欲しいのだけど……」
首から出たのは紫の声
「好きな言葉を教えてくれないかしら?」
首だけでキルに問う
「ストーカーが趣味かな君?ボクが答える必要ある?無いよねぇ~?」
馬鹿にした笑顔で笑うキルに式越しの紫は言う
「あら?貴方の墓標に書く言葉を聞いていたのだけど?」
その言葉にピクリと反応したキルの仮面の顔から殺気が一瞬出て引っ込んだ
「あらら……気付かなくて申し訳ない、さらっと挑発されちゃってたんだねボク……ゴメンねオバサン、歳取った人の言葉って回りくどくて分かりづらいんだよね」
「こちらこそ坊や相手に失礼したわ、でもやはり今のは忘れてちょうだい……だって坊やどころかガラクタに墓なんて贅沢過ぎるもの、野晒しで風化するのがお似合いだったのに気付かないなんて私とした事が……ごめんなさいね木偶人形さん」
「……」
キルの口が真横に一文字に閉じ、その先に相手が居るであろう鴉の首を睨む
「喋るしか出来ない癖にムカつくなぁ君……」
無表情に鎌をクルクル回しながらキルは首へ近付いていく
「それはこちらの台詞……人形風情が言語を使うものじゃないわ、ガラクタごときが身の程を知れ……」
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