自作NPC
パイン・ツリーが自作したNPCは、第5階層・氷河にいた。
この階層は、かつて地球を襲った“氷河時代”を思い浮かべてくれれば、わかりやすいだろう。
雪で覆われた真っ白な世界。常に激しい吹雪が吹いており、それに準ずるダメージ、スタミナの低下、移動速度の低下など。様々なバッドステータスが侵入者を襲う。
対策をしていなければ、身動きが取れず、たちまち体力が0になってしまう階層だ。
この階層には、階層守護者の住居、氷結牢獄、そして魔女の館がある。
今回、用があるのは魔女の館だ。
パイン・ツリーは玉座から、第5階層のある雪山に転移した。
リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで転移できて嬉しいが、それよりも眼前に広がる自然にくぎ付けになる。
こちらのリアルでは失われた自然に、感動した。雪のサクサクという音。ゴオオオッと吠える吹雪。ずっと先に見える巨大な氷山は、自然の恐ろしさと雄大さを表しているようだ。例えデータでも、記憶の中の雪とよく似ている。この作り込み、作成担当をしたメンバーは本当にすごいと、改めてパインは感心した。
そして身を縮める。
寒冷地エリアの対策は元より、よく足を運ぶエリアなので必要なアイテムは装備している。
しかしリアルになった第5階層は、とっても寒そうだった。
「さっむ。寒さを感じないけど、見た目が激しくて寒い」
不思議な感じなのだが、体に吹雪が当たっても痛くなかった。綿が当たるような感覚で、決して痛覚を刺激するものではない。これがアイテムの力か!偉大だなァ!
約20cm大の雪だるまを作ってから、雪山の中にある祠に入った。
天然でできた洞窟っぽい見た目に、中央に館へ直接入れる転移門が設置されている。そして転移門を中心に円状に柱が6本置かれていた。柱には特に装飾はされていない、縦にまっすぐ何十本も筋が入れられているだけである。
祠は観覧車一台が入れるぐらい天井が高い。その天井には、ライトブルーのクリスタルが素材にした大きなシャンデリアが下げられている。
シャンデリアは自ら輝きを放ち、祠を淡い青色の光で照らしていた。
「(綺麗!あー、青い光のおかげで心が落ち着く…)」
ちなみに、このシャンデリアは侵入者を撃退するアイテムである。
シャンデリアの細かいクリスタル一つ一つが、氷属性のビームを打つ。侵入者に属性耐性があっても、凍結による動きの束縛、足元が氷り滑って動きにくくなるなど、他にもペナルティが敵を襲う。それら、すべてに耐性がなければ戦いにくくなる、ちょっと小賢しい罠だ。この罠がユグドラシルと同じく、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーに対して作動しないことに安心した。パインはどうどうと足を進める。
転移門は無人ではなく、常に2体のしもべに警備させている。
数十体の虫系モンスターが日替わりで交代するため、アインズ・ウール・ゴウンの攻略掲示板にも記載されていないモンスターもいた。ここまで来る侵入者は少ないので、あまり情報が上がらないというのもある。
今日は、腕が4本、足が2本のクワガタとカブトムシがいる。
武器は装備していないので、格闘タイプかな?
パインに気づき、顔だけをこちらに向けて凝視している。恐怖公も当てはまるけど、本当にこのタイプの異形種は、どういう体の作りになっているのだろう。
傍に寄ると、2体は腰を低くした。
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