ハーメルン
IS学園での物語

「っ、はぁ!」

 エネルギー減少付きの過剰なボス演出をさっさとやめると、同時に生徒会長が突撃。槍を前方に突き出して前進。
 どうやらあの風が多少は足止めになっていたようだ。まぁそうでなくては困るのだが。
 たった十数秒でエネルギーを百も使ったのだ。本当はもっと大きな効果が欲しかったが、贅沢は言えない。

 俺の顔目掛けて文字通り飛んできた槍と生徒会長を左に回り込んで避ける。

「……甘いですね」
「一回で終わりと思う方がおかしいんじゃない!?」
「……それを含めてもですよ」

 そうして放たれる横への凪ぎ払い。襲い掛かる水の槍を滑り込ませた不可視の刀で受け止める。
 この科学が進んだご時世において、随分とファンタジーな光景だ。俺達だけ何処か違う世界からやって来たものかと思えてしまう。

「ふんっ!」

 両手で押し返してやれば力の流れに逆らわず、素直に距離を取ってバレリーナのようにくるりと回ってから構え直す生徒会長。随分と余裕があるようだ。

「言ってくれるわね。じゃあもう一度!」

 まるでさっきのやり取りを巻き戻したかのように再び突いてくる。狙いはやはり顔面。簡単に避けられる。
 だが気になるのは先ほどと違い、槍というリーチの長さを最大限生かしてきたところか。こちらの間合いの外からの攻撃となれば近付くしか手はない。

「芸がない!」

 こちらも先ほどと同じように左に、時計回りに動いて回避。そうすれば続けて来るのも読みやすい。
 そう思って取った俺の行動に、一瞬だけにやりと嬉しそうに笑うのが印象的だった。

「ほら、また行くわよ!」

 その笑みも一瞬だけで、直ぐに引き締めて襲い掛かる。やはりというかまた俺を追尾するように槍が横に凪ぎ払われた。
 変えるのはここからだ。

「へぇ……そうするんだ」

 横に凪ぎ払われた槍を潜って、一気に踏み込む。振るわれた槍の風圧を頭上に感じながら、前進していく。こちらの刀の間合いへと。

 しかし、また攻撃が外れて接近を許しているというのにこの人の余裕は崩れない。
 何を根拠にそんな余裕があるのか。既にこちらの間合いだというのに。

「いないいない――――」
『っ、春人!』

 その余裕の正体が分かるのに時間はいらなかった。生徒会長が槍を横に凪ぎ払いながら、身体をこちらに向かせてくれば――――

「――――ばぁ」
「っ!!」

 ――――いつの間にか左手に持っていた鞭のような剣が右下から振り上げられようとしていた。顔には悪戯に成功した子供のような表情を浮かべて。
 前へと向かっているのも相まって、とてもじゃないが避けられそうにない。こんなカウンターが決まればそれで終わりとなる可能性だってある。

「エンチャント・マイナス!!」
『流れ、変える!』
「ん?」

 慌てて発した指令をミコトは正しく受け取ってくれた。前方に風の層が出来上がる。これがミコトが言っていた防壁らしい。
 風による防壁は蛇腹剣の勢いを確実に殺ぎ、与える被害を少なくした。風と防壁で残りシールドエネルギーは四〇九。多少のダメージは仕方ない。

「ぐっ……今だ!」

 予想していた手応えとの違いに生徒会長の動きが僅かに鈍った。その隙に空へと逃げ出す。

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