ハーメルン
IS学園での物語

 使った二〇秒間、ただ飛び回ってたーのしーしてただけだからテストとしては不十分だろう。
 しかし、やるにしても俺の動きは見え見え。危ない橋なんて渡りたくないのが心情だ。どうしたものか。

『見えなきゃいいんじゃない?』

 見えなきゃってお前、あー……なるほどですね……。じゃあ、ついでにこういうのもどうだ?

『どれどれ……おー! いいね、やってみよう!』

 助言で思い付いた俺のイメージも正確に伝わったようで賛同を得る。そうなれば行動は早い。

「……行きます」
「速く来なさいな」
 《Attack ride Invisible!》

 新しい機械音声が流れると俺の身体を風が包み、更識会長の視界から俺は姿を消した。そして静かに移動開始。

「消えた……。さっきの武器にしてたのを応用したの……?」

 更識会長の言う通り、これは風王結界の応用だ。風の層によって光の屈折を変化させ、何もないかのようにする。
 だが、あくまで見えなくしただけなのでそこに存在はする。ならば見る以外での探知をすればいいだけ。

「でも熱感知なら……っ!?」

 そしてそちらへの対策も抜かりない。

「熱源が無数にある!?」

 更識会長の驚く顔が目に浮かぶ。
 熱源の正体はラファールから排熱されたホッカホカの空気で、それを風で逃がさないようにしているのだ。
 しかし、熱も少しすれば冷めていくもの。今回は直ぐに決め技を放つからいいが、改良が必要だ。

『で、今の春人の状況を厨二っぽくお願いします』

 孤独と闇が俺を包み込んでいる……!

 IQ下がったままだったから気付かなかったが、風王結界全身にやれば光を通らなくなる訳だから俺が何も見えなくなるのは当然な訳で。
 そんな状況でレーダーだけを頼りにふわふわ動いていた。アーマードコアでレーダーの位置と色で敵の場所を把握するという事を覚えてなければ身動き一つ取れなかっただろう。

『やっちゃったぜ』

 暗いよ怖いよ! これ姿消してる優位性ないよ! さっさと突貫するしかない!

『あっ、ちょ…………ぅん?』

 上を取っていた俺は早速風王結界を解いて斬りかかる事に。でないと俺のSAN値が大変な事になってしまう。

「シッ!」
「っ、上から!」

 上からという死角から姿を現して斬りかかるが、水で真正面から受け止めるのではなく、逸らされた。地面と『葵・改』の刃がぶつかる。
 狙いの一撃は外されたが、お互いに近距離。と、すれば俺にも勝ちの目は充分あるはずだ。

「ふっ!」

 まず攻めたのは更識会長から。この距離では槍は使えないと考えたのか、左手の蛇腹剣を連結させた状態で振るう。
 しかし、『葵・改』を手離した右手の指二本で真剣白刃取り。押すも引くも許さない状況にすれば左手に持ち変えた刀で左から右へと胴体を切り払った。

「甘いわ……ね!」
「ちっ!」

 ありったけの水を防御に回し、ほとんど柄の部分だけとなった槍をこちらへ向けてくる。
 手で払いのけると槍から明後日の方向へと放たれる銃弾。

 くそっ、あの水面倒だな……。風で吹き飛ばすか?


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