ハーメルン
IS学園での物語

 早朝、前日にメンテをしなかったので更識会長との朝練をなくしてもらう代わりに思うところがあって久し振りに木刀を振っていた。

「ふっ……ふっ……!」

 以前お師匠様に教えられた通りの構えで素振りを行い、徐々に振る速度を上げていく。しかし、決して構えを乱してはいけない。
 もし乱せば千回目指して振るっているが、最初から数え直しと決めていた。
 この訓練は新たな日課にしようと思っている。

 というのも、俺のラファールはリミット解除すると装備がエクスカリパーのみになる。Fate風に言うと約束された不殺の剣となってしまう。

 ……カッコ良くなっちゃった。悪くないかも。でもやっぱり約束された勝利の剣の方がいい。まずは勝利すべき黄金の剣を抜くところから始めなきゃいけないな。

『無理無理、抜けないよ』

 何でそういう夢を壊すような事言うの? やってみなきゃ分からないじゃん。

『春人は岩に刺さってる伝説の剣抜こうとして、岩ごと持ち上げるタイプだから』

 ただのギャグじゃねぇか。でもその手があったか……。

 さて、話は逸れたが、リミット解除すればほぼ絶対にダメージが一しか与えられないので勝ち目がないに等しい。
 ならばどうするか?

「ふっ……!!」

 答えは直ぐに見つかった。手数を増やせばいい。一撃でダメなら、二撃。二撃でダメなら三撃と増やせばいいのだ。
 しかし、全力はたった一分しか出せない。そんな僅かな時間で勝負を決めるためには速さがいる。一呼吸で無数に切り裂く剣速が。

『燕返しは?』

 同時に三つの斬撃とかまず無理だし。それに三発だからな、シールドエネルギーが五〇〇とかある相手にはきつすぎる。一度に二桁は斬れるようになりたいのだ。

『ふむふむ、なら特訓あるのみだね! さっき九五回までやってたからそこから!』
 《Restart》

 やるのはいいけど、何かその機械音声邪悪だな。まぁ、いいか。

 何処がゴールで、今自分はどれくらい近付いているのかも分からないがやる価値はある。
 提示された回数を振るうべく木刀を構え直し、振り下ろした。少しでも見えないゴールに近付くため。

 九六、九七、九八、九九…………二〇〇。

『おう、待てい』

 す、すみません。真面目にやります。








「……忘れ物はないか?」
「う、うん……」

 部屋を一緒に出た簪に確認を取れば、俺が責任を持って鍵を掛けた。
 校舎へと歩き出そうとすれば不意に簪から恥ずかしそうにおずおずと手が差し出される。顔を見れば頬を薄く朱に染めてモジモジとしていた。

「……どうした?」
「あの、えっと……」
「……?」

 みるみる赤くなっていく簪。頬を染める程度だったのが、気付けば耳まで真っ赤になっている。
 分からず首を傾げていると、ゆっくりと訳を説明し出した。

「その、昨日倒れるように寝てたから……またそんな事があったら大変だから……手、繋ご?」
『ほほう、そう来ましたか……』

 何がどう来たんだ……。

 確かに昨日は部屋に着くなり、着替えるのも忘れて倒れるように寝ていた。声を掛けてくれた簪を無視して。もしまたそんな事があったら大変だと手を繋いで、支えると言っているらしい。

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