右側から左フック、上半身を反らして回避。そこへ今度は左側から放たれる右ストレートは真っ直ぐ俺の顔面へと迫ってくる。フックがやたら避けやすいと思ったらどうやらこちらが本命らしい。
「ふっ!」
短く息を吐き、左手の槍を反時計回りに回転させ、柄の部分を手首に当てる事で軌道を外側へとずらす。豪腕が髪を撫でた。
伸ばされたその豪腕が槍を押し退けて、ラリアットのように俺の頭部を狩ろうとする。
体勢を持ち直して前宙。飛んでいる間、目の前を右側からやって来ていた蹴りが素通りしていく。ただしゃがむだけだったら一撃もらっていた。
二機から繰り出される連撃と連携を後退しながら何とか防いでいるが非常にまずい。
何か向こうさんが本気出してきた。恐らく原因はISを展開したからだと思われる。おかげで防戦一方なんですけど。
《受けてばかりでは勝ちはないぞ。攻めろ。出来るな?》
この状態に業を煮やしたのか、ウィンドウに映る織斑先生は厳しい顔付きでこちらを見ている。
相変わらず無茶言う人だ。ともあれこの人から攻めろと言われたんだ。特段織斑達がピンチという訳でもないがやるしかない。
「……やります」
相手の攻撃を捌きながら俺がそう返事すると、厳しい顔から一転してニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。
《出来る出来ないではなくやる、か。私好みの返事だ。ならばやってみせろ!》
「……了解」
織斑先生も言っていたが、セオリー通り弱っている方から倒させてもらうとしますかね。
「セオリー通りやらせてもらう!」
『君はガンダムマイスターに相応しくない』
俺は……ガンダムになれないのか……。
とか余裕かましてたら左側が破損しているにも関わらず左拳を叩き付けようとしてきた。根性が半端じゃない。もっと他で生かすべき。
「遅いっ!」
「――――!!」
と、ここで俺はこの戦い初めての前進をした。というよりは攻撃してきた破損IS……二号に向かって体当たりしたのだ。瞬時加速を使って。
攻撃を掻い潜り、瞬時加速も使った体当たりは二号の体勢を崩すには充分。そんな状態でも無理矢理もう片方の手でアッパーを仕掛けてくる。顔だけ動かして回避。
さて、距離を詰めてしまった分、槍を短く持って斬りつけようとすればそこへ最後に現れたIS……三号が追撃はさせまいと背後から俺へ突進。
「隙だらけだ、な!」
言葉と共に、短く持った代わりに後ろに長くなった柄を顎下に潜り込ませる。最初から狙いはこっちだ。撃破するにしても、まずはこの二機を離れさせるのが優先だろう。
後ろを向いたまま槍の真ん中辺りを踵で蹴り上げれば、柄によって三号の顎が強制的に上へと向いた。
「悪いなっ!」
蹴り上げた体勢から後ろに飛び上がってぐるりと一回転。そして無防備となった三号の横面へボレーシュート。吹き飛ばされて少しだけ二機が離れた。
『二機の腕部より高エネルギー反応! あのビームが来るよ!』
作戦が上手くいったと喜ぶのも束の間、三号は吹き飛ばされながら右腕をこちらへ向けてきやがった。正面からは二号も同様に腕を向けてきて、腕部に備えられた砲口に光が灯る。
アリーナのシールドさえ突き破る威力のビームだ。もし当たれば、なんて想像もしたくない。
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