ハーメルン
IS学園での物語

 そしてその時一緒に来ていたオルコットがやたら見ていたが、負い目でも感じていたんだろうか。気にしなくていいのに。

 それにしても織斑がさっきから左手を上げたままにしているのは何なんだ?

「あ、ごめん。怪我してるからこっちか」
「……?」

 そう言うと今度は右手を上げた。相変わらずにこやかなその表情は何かを求めているように見える。

「んん? 春人、ノリ悪いぞ。こういう時はハイタッチだろ?」
「…………あ、ああ」

 言われて漸く何がしたいのか分かった。おずおずと怪我をしていない左手を上げると、そこに織斑の右手が重なるように叩く。格納庫に良い音が鳴った。

「今度は俺だな」
「……ああ」
「その、大丈夫なのか?」
「ほら、見てみろよ」

 不安そうに箒が訊ねる。さっきのはたまたま俺の戦い方が上手く噛み合っただけ。織斑の専用機がどんなものかも分からないのでは不安になっても仕方ない。

「これって……千冬さんの……?」
「ああ」

 しかし、織斑は自信ありとばかりにウィンドウを見せてきた。映し出された武装一覧には『雪片弐型』の文字。たしか織斑先生が現役時代に使っていた刀も『雪片』だったはず。

「俺は世界で最高の姉さんを持ったよ。だから俺も俺の家族を守る。そのためにも強くならなきゃな」
「――――」

 織斑が笑みを浮かべて言ったその言葉に少し呆けていた。

 正直に言って、恥ずかしい奴だと思った。そんな事を平気で口に出来るのだから。でもそれ以上に――――。

「……頑張れよ」
「おう!」

 返事と共に織斑が行く。第二試合、織斑とオルコットの戦いが始まろうとしていた。

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