ハーメルン
もし織斑一夏がアリー・アル・サーシェスみたいな奴だったら
聖戦-止める鍵-

 相手の雪片弐型のマガジンが切り離される音を拾った楯無は、防御に回したアクアナノマシンを解き、それを攻撃に転じようとするが、それはアインの罠だった。

「もう一発!」

 残る一発の弾丸を装填したままマガジンを切り離して楯無の意表を突いたアインは、その刀身を展開させ、そこに展開装甲エネルギーの光が集中する。

「……ッ!?」

 展開装甲のエネルギーを纏った弾丸が発射される。
 反射的にアクアナノマシンで防ごうとする楯無。
 このアクアナノマシンはISエネルギーで動かす代物であるため、当然零落白夜のエネルギーを纏ったソレを防ぐことなど不可能だ。
 しかし、彼女の予想が()()()()()、それは防げる筈だった。

 眩い光を放った弾丸が、水のヴェールに集中する。
 その弾丸が、その水のヴェールを貫く事はなかった。

(やはり……!)

 己の妹が人質に取られている状況でも、楯無は辛うじて冷静さを保ちながら敵の状況を分析する。
 敵のISは本来なら燃費が悪いものであるが、ラウラ・ボーデヴィッヒと戦っていた時はあまり激しく動かずに、スラスターも最低限しか吹かしていなかった事から、おそらくこの男は最初から戦力を温存するつもりであったようだ。
 この男の事だ、この学園から脱出するためのエネルギーは残しておく筈である。だから、下手に零落白夜にエネルギーは割けない。

(かんちゃん……!)

 今すぐにでも助けに行きたい衝動をぐっと抑える。
 勝機がない訳じゃない。
 あの男にもそう余裕はない筈だ。
 自分のISがあの男のISと相性がいいとはとても言えたモノではないが、この男はあくまで自分を甚振るために簪という人質を使ってくる筈だ。

 つまり、この男は自分が確実に勝てる範囲での戦闘を楽しむ。
 その為に自分の妹を人質として取っている。
 という事は、何等かの隙を突けばこの男を出し抜いて簪を取り戻すチャンスもある筈だ。
 だから、それまでは何としても粘らなければならない。

「それにしてもあのお嬢ちゃんも可哀想なこって……」

「なんですって?」

「俺という存在がなきゃ、専用機も手に入って人質に取られる事がなかったろうによ。そんでもってこうして疎み続けてきた姉の足を引っ張る羽目になるたぁ、存外喜劇なもんじゃねえか」

 ブチ、と何かが切れる音が聞こえたような気がした。

 ――――コイツ、イマナンテイッタ?

 たった一言。
 たったその一言で、楯無に戻りかけていた少女は、一瞬にして“刀奈”という少女の導火線に火を付けた。

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