雪ノ下がこんなにオタクなわけがない
それは二年になってすぐの頃。俺が部室でいつものようにラノベを読んでいた時のことだった。
「ちょっ、痛いですって先生!」
「やかましい!痛いのが嫌なら抵抗するな!」
……セリフだけ聞けば犯罪臭バリバリだが、これは平塚先生の声だ。あの人なら生徒に妙な真似をするようなことはないだろう。……ないよね?いやでもたまにファーストブリットとか食らうしな……。
「おお!居たか比企谷!」
ちょっと考えてる間に先生が入ってきた。いい加減ノック覚えようよ……
「どうしたんスか、先生。随分騒がしいですけど」
「ああ、ちょっと新入部員を連れてきてな。ほら雪ノ下、挨拶しろ」
「はあ、えーと、雪ノ下です。ってなんですか入部って!?聞いてないんですけど!?」
俺も聞いてないんですけど。
「言ってないからな。君はしばらくここで活動したまえ」
「いやですよ!?ていうかあたし陸上部あるんですけど!?」
「やかましい、学校にあんな物持ち込んだペナルティだ。陸上部が休みの時だけで良い。ここで少し秘密の隠し方を勉強しろ」
あの、秘密って目の前に俺が居るんですが。
「いや意味わかんないですから!?ていうか要らないですよそんなの!」
「要らないことはないだろう。アレを見つけたのが私以外の誰かだったらどうするつもりだったんだ君は」
「う……!い、いや、でも、ここもなんか居るじゃないですか!アレにばれたらどうするんです!?」
おい。なんだアレとかなんかとかって。
「相手がいなければ隠す訓練にならんだろうが。安心しろ。仮にばれたところで彼にはそれを悪用する甲斐性は無いし、秘密を晒す相手もいない」
「ねえ、なんでさっきからおいてきぼり食らってんのにボロクソにダメージ受けてんの俺?そろそろ泣いていい?」
「ま、隠し通せるならそれで問題無いし、ばれてもこいつなら相談に乗ってもらえるだろう。とにかくしばらくここに通いたまえ」
「あ、ちょっと!?」
平塚先生はこちらの話をろくに聞かずに行ってしまった。なんだったんだ本当……。
「はぁ……もう、どうしろってのよ……」
呆然と呟く雪ノ下と目が合う。彼女は気まずげに目を逸らした。
俺はこの女を知っている。というかこの学校でこいつを知らないやつを探す方が難しいだろう。そのくらい有名人だ。
この千葉で強すぎる力を持つ雪ノ下家のお嬢様。
容姿端麗で学校一と目される美少女。
成績は常に学年トップレベルで県でも一桁台。
陸上部のエースでインターハイでも記録を残している。
さらには人当たりが良く生徒教師双方からの信頼も厚い、男女共に絶大な人気を誇るリア充中のリア充。ウチのクラスの葉山、三浦と並ぶリア充四天王の一角だ。四人目?んなもん知らん。
とにかくそんなミュータントみたいな女が、一体なんでこんなとこに連れてこられたのか……
「……ねえ」
「あん?」
「ここって何の部活なの?」
「聞いてねえのか?」
「あんたバカなの?聞いてたら質問なんかしないでしょ?」
あ、うん。こいつと仲良くなるのは無理だ。いや、最初からわかってたけどね。
それはさておき質問に答える。
「奉仕部、だってよ」
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