ハーメルン
一撃のプリンセス〜転生してカンフー少女になったボクが、武闘大会を勝ち抜くお話〜
生まれ変わった喜び【挿絵有り】

 少し硬い木製のベッドの上で、ボクは目を覚ました。

「うん……っ」

 ゆっくりと上半身を起こすと、大きく背伸びをした。背骨がパキパキと小気味よく鳴る。

 自室にあるゼンマイ式の壁掛時計が指し示す時刻は、四時。お坊さんならともかく、一般人的にはまだ眠っていていい時間だ。

 しかしボクは目をこすると、ためらいなくベッドから降りる。

 タンスの中から早朝修行用の軽装を引っ張り出すと、寝巻きを脱ぎ捨て、それに着替えた。

 髪の毛は、寝起きのせいで少しボサボサになっていた。なので木製のクシを通して毛並みを整える。

 肩甲骨を覆い隠すほどの後ろ髪を、三つ編みにしていく。

 そうして姿見に立つ。

 映っているのは、長い後ろ髪を太い一本の三つ編みにし、綿製の半袖に長ズボンという軽装をまとった小柄な――――女の子。

 手前味噌になるが、今鏡に映っているボクの姿は、見目麗しい美少女だった。
 透き通った鼻梁に、薄い桜色の唇、ぱっちりとした二重まぶた。大きめの瞳の上には、長いまつげが弓なりに沿っている。宝石のような華やかさの中に、ヒマワリのような快活さを含んだような美貌。 
 色白な肌はきめ細かく、とてもすべすべだ。まるで作りたての陶器のようである。

 女性なら誰でも羨むであろう美しさを、ボクは持っていた。

 だというのに、

「……はあ」

 それを見ると、どうしても小さく溜息を突いてしまう。

 ……どうしてこうなっちゃったかなぁ。

 でも、こう(・・)生まれてしまった以上、もう嘆いても仕方が無い。

 なのでボクはすぐに気を引き締め、家を出たのだった。









 外は、当然ながらまだ暗かった。

 東の山の向こうからはうっすらと日光が見えるが、こちら側には差していない。町中はまだ夜同然だった。

 石畳で舗装された大通りの端々に軒を連ねているのは、レンガもしくは木で造られた建築物の数々。瓦で屋根を作っているという点では、どの建物も共通していた。

 石畳の上を、ボクはスタスタと早歩きで進む。

 その途中、一人のおばあさんと鉢合わせした。おそらく、散歩でもしていたんだろう。

「あら、(リー)さん家の末っ子の星穂(シンスイ)ちゃんじゃあないの。こんな朝早くからお出かけかい?」

 「シンスイ」と呼ばれたボクは立ち止まり、少し恥ずかしそうにしながら、

「えっと……ちょっと朝の修行に……」
「そうかい。朝から元気だねぇ。気をつけるんだよ」

 そう言うおばあさんに軽くお辞儀してから、ボクは再び早歩きを再開した。

「……シンスイちゃん(・・・)か」


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