ハーメルン
のんびり天使は水の中
くやしくないの?

一番手はSaint Snowで、やはりこのライブに出るからかレベルは高かった。続いてAqoursの番になり、緊張していないか心配だったけど、控室で何かあったのか緊張はほぐれているようだった。まぁ、直前にあのパフォーマンスを見たからか呑まれかけているようにも見えるけど。

「大丈夫だよね?」

僕は一人呟くと、曲が始まる。結果として僕の心配は杞憂だったようで、ミスもほぼ無く、はたから見れば一番の演技だといえた。でも、ちょっと空気に呑まれたからか、はたまたランキング形式だからか、いい結果を残そうという意識が前に出ている気がした。それに、いつもと何か違う違和感があり、今日のライブよりあの日歌っていた『夢で夜空を照らしたい』の方が好きだったかな?どうして、こんなに違く聞こえるんだろ?

そうして、計三十組の演技が終わり、観客の投票を経て、入賞者が即発表された。Aqoursは入賞できなかった。まぁ、いきなり入賞できるとは思ってなかったからそこまで驚きは無かった。


会場の出入り口付近で皆が出てくるのを待っていると、にこさんとまた会った。

「二組目のAqoursって、沙漓の知り合い?静岡だったけど」
「そうですよ」
「そう。詳しい結果を知ってるけど知りたい?順位と投票数」
「いいんですか?部外者に言って」
「あんたが他言しなければ問題ないわよ」
「じゃぁ――」


「沙漓ちゃん、どうだった?」
「はい。良かったと思いますよ」

にこさんは別件があるからと別れて、少し待っていると千歌さんが駆けて来て、早速感想を聞かれたから、簡単ではあるけどそう伝えた。千歌さんは満足そうに頷いた。皆もちゃんと演技ができたことへの安堵と共に、何処か満足のいくものじゃなかったのか暗かった。


そして、場所は変わって何故かタワーの中。なんでここにきたんだろ?観光だよね?まぁ、もう少し東京に居ても問題ないからいいけど。

「おまたせー。わー、なにこれ、キラキラしてる!はい、どうぞ」
「うん、ありがと」
「全力で頑張ったんだよ。私はね今日のライブが今までで一番で気が良かったと思う」
「でも、」
「それに、周りは皆本選に出ているような人たちだよ。だから、入賞できなくて当然だよ」
「それは……でも、あれくらいできないと」

千歌さんはアイスを持ってくると、落ち込んでいる空気を和らげようと振る舞う。まるで、空元気で無理しているかのように。

「でも、ルビィもそう思う。まだまだだって」
「マルも……」
「何言ってるのよ。あれはたまたまよ。天界が放った」
「なにがたまたまずら?」

ヨハネもこの沈んだ空気をどうにかしようとするけど、ヨハネはヨハネでそれなりに堪えているみたいだった。
すると、千歌さんの電話が鳴る。

「高海です。はい、はい、わかりました」
「誰?」
「うん、今日のイベントの人。何か渡し忘れたものがあったみたい」
「……」
「だから、今日の場所にもう一度来れないかって」

はぁ、用件はたぶんあれだよね?そうなると、裏方の僕は行かない方がいい気がするかな?それに、あの結果を皆と一緒に聞く勇気はないから。


~千~


「ごめんね。呼び戻しちゃって。でも、一応参加グループには渡す決まりになっているから。悪く思わないでね」

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/8

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析