ハーメルン
魔法少女とアカデミア
魔法少女と救助訓練

 ☆



「おはようございます、リカバリーガール。少しよろしいですか?」
「おや、こんな朝早くからどうしたんだい?」

 翌日。
 私はお礼の菓子折りを持って、授業の始まる1時間ほど前に保健室を訪れた。
 幸いにもリカバリーガールはお暇だったようで、お茶を啜りながら窓の外をのんびりと眺めていた。

「すいません、昨日の今日で。怪我の治療でご迷惑をおかけしましたから、お礼と謝罪を込めて、粗品ですがこちらをお持ちしました」
「……こ、これは! 最中(もなか)一筋160年。ファンの間では伝説と名高い老店舗『越後屋』の一日限定30箱の小豆最中じゃないか!」

 おお、あのリカバリーガールが元気に驚きの声をあげている。
 そこまで大げさに驚いてもらえると、頑張って入手したかいがあったというものだ。

「お前さん、これをどうやって……」
「最初は手作りにしようかとも思ったんですが、ランチラッシュに相談したところ越後屋を紹介されまして。今月いっぱい、土日に無償でお手伝いをすることを条件に1箱買わせていただいたんです」

 ランチラッシュの頼みなら仕方ない、と苦笑混じりに引き受けてくれた店主さんには申し訳ないことをした。まあお金は発送料含めてこちら持ちなので、あちら側に損は無いはずだ。
 私としても接客は得意なので、授業のない土日にお手伝いすることに否はない。

「お前さんも大概無茶なことするねえ」
「いえ、社会経験を得られるので、そう悪いことではないですよ?」
「そうじゃなくて、あのランチラッシュに借りを作ったことだよ」
「……? どういう意味でしょう?」
「知らないのかい? ランチラッシュは人使いの荒いことで有名なんだよ」
「ああ……」

 確かに、彼の厨房で働く人たちは、みんな死にものぐるいといった様子で働いている。その殆どは目が死んでいるか、逆に爛々と輝いているかのどちらかだ。
 そういう面で見れば、ランチラッシュの人使いは荒いとも言える。たまに厨房を抜け出して生徒達に感想を求めているのだから、尚更だ。

「それに関しては、逆ですね。彼が私に借りを返したことになります」

 一度、ランチラッシュが炊き出しをしている時に、その手伝いをしたことがある。
 その時はたまたま人手が不足していて、ランチラッシュが1人で全てを賄っている状況だった。オールマイトの付き添いでその場を訪れていた私は、それを見かねて手伝いを申し出たのである。
 私としては借りとも思っていない当然の事だったので、今回の件でお相子ということにしたのだ。

「まあそんな訳で、どうぞ召し上がってください。私これでお暇しますので」
「ちょっと待ちな。お前さん、この後なにか用事があるのかい?」
「いえ、授業が始まるまでは暇ですが……?」
「なら少し付き合いな」

 困惑する私をよそに、リカバリーガールは湯のみを取り出してポットからお茶を注いで手渡してくる。
 次いで最中1つ手に取ると、それを私に差し出してきた。

「色々聞きたいことも、話したいこともあるんだ。例えば、オールマイトの昔話とかね」
「……はい。では、少しだけ」

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